相続した土地の売却、いくら手元に残る?── 更地なら売値の7〜9割

ロープと境界杭で囲われた更地に、手取りの目安を書いた札が下がるイラスト。相続した土地を売ったとき手元にいくら残るかを示すアイキャッチ

相続した土地は、名義を親から自分に変えるまで売ることができません。名義変更を終えて更地を売った場合、手元に残る手取りは売値の7〜9割です。売値2,000万円の更地なら、買ったときの契約書がある場合の手取りは約1,680万〜1,870万円です。契約書がない場合の手取りは約1,470万〜1,640万円まで下がります。書類があるかどうかだけで、手取りは約220万円変わります。

あなたの状況売値2,000万円のときの手取りこの記事の読み方
買ったときの契約書がある約1,680万〜1,870万円手取りを試算する
契約書がない(先祖代々)約1,470万〜1,640万円手取りを試算する
相続税を払い3年10か月以内約1,500万〜1,670万円期限のある特例
きょうだい2人で共有約735万〜820万円共有の分け方

※ 更地・境界が確定済み・所有期間5年超の概算です。測量や取り壊しが必要なら、その費用が上乗せで引かれます。

家(建物)ごと売る予定の方は、相続した家の売却で手取りがいくらになるかをまとめた記事をご覧ください。まだ名義変更が済んでいない方は、最初の関門からお読みください。

この記事を読むと:

  1. 自分の土地がいま売れる状態かを判定できます
  2. 売値からいくら残るかを計算機で試算できます
  3. 期限のある特例を逃さず動けます

相続した土地はすぐに売れる?

更地から3つの門をくぐって売れる状態にたどり着く図。名義変更・確定測量・農地の許可という3つの関門を順に越える必要があることを示す
図1:相続した土地には、売る前に越える関門が3つある。

ひとことで言うと──すぐには売れません。名義・境界・地目という3つの関門があり、これを越えるまで買主に引き渡せないからです。

関門必要な手続きかかる期間の目安
名義相続登記(名義変更)1〜2か月
境界確定測量3〜4か月
地目農地なら許可・転用3か月〜1年
(共有)共有者全員の同意話し合い次第

名義変更が終わるまで売れない

亡くなった方の名義のままでは、買主へ所有権を移す登記ができません。契約そのものは相続人が結べますが、引き渡しの日に名義変更が終わっていなければ取引が止まります。売却の第一歩は不動産会社への連絡ではなく、名義変更です

この名義変更は、2024年4月から義務になりました。土地を相続で取得したと知った日から3年以内に申請しないと、10万円以下の過料の対象になります。2024年4月より前の相続も対象で、こちらの期限は2027年3月末です。

費用は登録免許税と司法書士報酬です。登録免許税は土地の固定資産税評価額の0.4%で、このしくみは固定資産税評価額の記事で説明しています。なお「相続人申告登記」という簡単な手続きもありますが、売るときには通常の名義変更が改めて必要です

境界がはっきりしない土地は測量から

買主は、どこまでが自分の土地かわからない土地を買いたがりません。隣の家との境に杭がない場合は確定測量が必要です。土地家屋調査士が隣の所有者と立ち会い、境界の位置を全員で確認します。費用は40万〜80万円、期間は3〜4か月が目安です。

あとで説明する「国に引き取ってもらう制度」でも境界の確定は必須です。境界の確定は、売る道でも手放す道でも避けて通れません

農地や市街化調整区域は許可が要る

登記簿の「地目」が田や畑の土地は、誰にでも売れるわけではありません。農地を売るには農業委員会などの許可が必要で、買える相手も原則として農業をする人に限られます。宅地に変えて売るなら、さらに転用の許可が要ります。農業委員会への届出も、おおむね10か月以内です。

あなたの土地は手取りいくら?

売値の帯から仲介手数料・測量費・税金が差し引かれ、残りが手取りとして示される内訳図
図2:売値がそのまま入るわけではない。更地なら、費用と税金を引いた手取りは売値の7〜9割。

ひとことで言うと──更地なら手取りは売値の7〜9割です。幅が出る一番の理由は税金で、買ったときの値段がわかるかどうかで大きく変わります。

相続した土地を売ったときの手取り(概算)
手元に残る手取りの目安:
税金の目安:
※ 概算です。買ったときの値段は売値の6割、取得費加算は売値の8%と仮定しています。測量費60万円・取り壊し費150万円は目安の額です。所有期間5年超として税率20.315%で計算しています。正確な金額は専門家にご確認ください。
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相続した土地の手取りを、正確に知りたい方へ

土地の値段は形・間口・接する道路で大きく動きます。相続に強い専門家が、売値の見立てから税金の試算までを整理します。

売れそうな値段契約書あり契約書なし
500万円410万〜460万円350万〜400万円約56万円
1,000万円840万〜940万円730万〜820万円約112万円
2,000万円1,680万〜1,870万円1,470万〜1,640万円約223万円
3,000万円2,530万〜2,810万円2,210万〜2,460万円約335万円
5,000万円4,230万〜4,680万円3,700万〜4,100万円約559万円

売値から引かれる4つの費用

売値がそのまま手元に入ることはありません。引かれるものは大きく4つです。

  1. 仲介手数料:上限は売値の3%+6万円に消費税を足した額
  2. 測量費:境界が確定していない場合に40万〜80万円
  3. 取り壊し費:古家つきの土地なら100万〜200万円
  4. 税金:もうけが出たときの譲渡所得税と住民税

このほか契約書の印紙代と名義変更の費用もかかります。なお2024年7月から、売値800万円以下の土地は仲介手数料の上限が33万円まで上がりました。

買った値段がわからないと手取りが減る

税金は「売値」ではなく「もうけ」にかかります。もうけは、売値から買ったときの値段と売却の費用を引いた額です。ところが相続した土地では、親や祖父母の契約書が見つからないことがよくあります。その場合は、売った金額の5%を買ったときの値段とみなします。裏を返せば売値の95%がもうけとして課税されるということです

売値2,000万円の更地で比べます。契約書があり1,200万円で買ったとわかる場合、税金は約148万円です。契約書がなければ買った値段は100万円の扱いになり、税金は約371万円に増えます。差は約223万円で、これが手取りの差になります

だからこそ、まず探すべきは権利証や古い契約書です。金額がわかる資料が1枚でも出てくれば、税金は大きく変わります。

税率は親が買った時期で決まる

相続した土地は、親が買った日をそのまま引き継ぎます。売った年の1月1日で5年を超えていれば税率は20.315%、5年以下なら39.63%とほぼ2倍です。先祖代々の土地ならまず20.315%で、上の計算機もこの税率です。

3年10か月を過ぎると税金が増える

相続開始から3年10か月までの期限を示す時間軸の図。申告期限10か月と取得費加算の締切3年10か月が並ぶ
図3:相続した土地の売却には、期限つきの特例が並んでいる。

ひとことで言うと──相続税を払った人が3年10か月以内に売ると、税金を減らせます。この期限を過ぎると使えなくなるため、売る時期そのものが節税になります。

特例使える人期限
取得費加算相続税を払った人相続から3年10か月
空き家の3,000万円控除古い家つきの土地相続から3年後の年末
低未利用地の100万円控除安い土地・5年超保有2028年末まで

相続税を払ったなら「取得費加算」

相続税を払った人がその土地を早めに売ると、払った相続税の一部を「買ったときの値段」に足せます。もうけが小さくなるぶん、税金が減るしくみです。足せる期限は、相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年まで。申告期限が10か月ですから、実質は相続から3年10か月が締切です

相続税を払っていない人は使えません。払ったかどうかは相続税の計算をまとめた記事で確かめられます。

古い家つきの土地なら3,000万円控除

亡くなった方が一人で住んでいた家とその土地には、もうけから最大3,000万円を引ける特例があります。家が1981年5月31日以前に建てられていることが条件で、取り壊して土地として売る場合も対象です。

期限は、相続が始まった日から3年を過ぎる日が属する年の12月31日まで。制度そのものの期限は2027年12月末です。相続した人が3人以上なら控除は2,000万円に下がります。なおこの特例と取得費加算は、同時には使えません。

安い土地なら100万円控除

使われていない土地を手放しやすくする特例もあります。都市計画区域の中にあり、5年を超えて持っていた土地を500万円以下で売った場合、もうけから100万円を引けます。市街化区域などでは、この上限が800万円まで広がります。この特例は2028年12月末まで延長されています。使えるかどうかは市区町村が出す確認書で決まるため、売る前に役所へ相談してください。

どの特例が使えるか、まとめて確認したい方へ

特例は組み合わせで有利不利が変わり、期限もばらばらです。相続に強い専門家が、使える制度を整理してお伝えします。

きょうだいと共有の土地はどう売る?

土地の分け方3方式の比較図。売って現金で分ける換価分割、土地を分けて登記する現物分割、1人がもらって現金を渡す代償分割を並べる
図4:分け方は3つ。売るなら換価分割がいちばん公平になりやすい。

ひとことで言うと──共有の土地は、全員が同意しなければ売れません。売って現金で分ける「換価分割」がもっとも公平で、もめにくい方法です。

分け方やり方向いている場合
換価分割売って現金を分ける誰も使う予定がない
現物分割土地を分けて登記する広くて分けやすい
代償分割1人がもらい現金を渡す1人が使い続ける

共有は全員の同意が要る

共有の土地を売るには、共有者全員の同意が必要です。1人でも反対すれば、土地全体を売ることはできません。連絡が取れない相続人がいると、話し合いが進みません。共有のまま放置すると、相続のたびに共有者が増えて売れなくなります。これが空き地が塩漬けになる典型的な流れです。

売って現金で分ける「換価分割」

もっとも実務で使われるのが換価分割です。代表者か全員の共有名義で名義変更を済ませ、売却して、入ってきたお金を持ち分に応じて分けます。土地を切り分けずに1円単位まで公平に分けられるのが利点です。譲渡所得税は持ち分に応じて共有者それぞれにかかるため、全員が確定申告をします。

自分の持ち分だけ売るのは最後の手段

自分の持ち分だけを売ることは、法律上は可能です。ほかの共有者の同意も要りません。しかし買い手は限られ、価格は相場を大きく下回るのが普通です。さらに見知らぬ第三者が共有者に加わり、きょうだいとの関係が壊れます。持ち分だけの売却は、話し合いが完全に行き詰まったときの最後の手段です

売らずに持ち続けるとどうなる?

ひとことで言うと──使わない土地でも、固定資産税と管理の手間は毎年かかり続けます。売れない土地には、国に引き取ってもらう制度もあります。

  • 固定資産税・都市計画税:評価額に応じて毎年かかります
  • 草刈り・管理費:業者に頼むと1回2万〜5万円
  • 建物を壊した場合:土地の固定資産税が最大6倍になります
  • 管理が悪い土地:近隣トラブルや行政の指導につながります

持ち続けると毎年かかるもの

使う予定のない土地でも、所有している限り固定資産税はかかります。遠方なら草刈りも業者に頼むことになり、これが何十年も続きます。

気をつけたいのは、古家を壊したあとの固定資産税です。住宅が建つ土地の税金を軽くする特例が、更地にすると外れます。建物を壊すと、翌年から土地の固定資産税が最大6倍になります。売れる見込みが立ってから壊すのが安全です。

国に引き取ってもらう制度

2023年4月から、相続した土地を国に引き取ってもらう制度が始まりました。申請には土地1筆あたり14,000円の審査手数料がかかり、承認されると負担金を納めます。負担金は原則20万円です。ただし市街地の宅地や森林は面積に応じて計算し、200平方メートルの市街地の宅地で約80万円になる例もあります。

ただし建物がある土地、担保がついた土地、境界がはっきりしない土地は受け付けてもらえません。結局、境界の確定は避けられません。

貸す・使うという選択肢

立地によっては、売らずに貸す道もあります。ただし貸している土地は買主が限られるため、あとで売りにくくなります。

今日からできる4つのステップ

ひとことで言うと──書類探しから始めてください。名義変更、査定、売却の順に進めれば、半年から1年で現金化できます。

  1. 書類を探す(今週):権利証、売買契約書、測量図、固定資産税の納税通知書
  2. 名義変更をする(1〜2か月):司法書士へ依頼するか、法務局で相談する
  3. 査定を取る(2〜4週間):不動産会社3社以上に依頼し、根拠を聞く
  4. 売却して申告する(3〜6か月):売った翌年の2月16日から3月15日に申告

まず書類を探す

最初にやることは、不動産会社への連絡ではありません。実家の押し入れや金庫を探して、書類を集めることです。買ったときの金額がわかる資料は、見つかるかどうかで手取りが数百万円変わります。

集めるのは、権利証、売買契約書と領収書、測量図、固定資産税の納税通知書の4点です。名義変更にはこれに加えて、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍と、相続人全員の戸籍・印鑑証明が要ります。

名義変更と査定は同時に進める

名義変更には1〜2か月かかりますが、その間に査定を取ることはできます。査定は3社以上に頼み、金額だけでなく「なぜその金額なのか」を必ず聞いてください。根拠を説明できない会社は避けたほうが安全です。

境界が確定していない場合は、この段階で土地家屋調査士に相談します。測量には3〜4か月かかるため、ここで止まると特例の期限に間に合いません。相続税を払った人は、3年10か月の期限から逆算して動いてください

売った翌年に確定申告をする

土地が売れたら、翌年の2月16日から3月15日の間に確定申告をします。特例を使うなら、この申告をしなければ適用されません。税金がゼロでも申告は必要です。

よくある質問

ひとことで言うと──相続した土地の売却で多い6つの疑問に、短くお答えします。

相続した土地を売るまで、どれくらい時間がかかりますか?

名義変更に1〜2か月、買主が見つかるまでに3〜6か月です。境界が未確定なら、測量に3〜4か月が上乗せされます。

土地の相場は自分で調べられますか?

調べられます。国土交通省の不動産情報ライブラリで、実際に売買された価格が地域ごとに公開されています。

古い家がついた土地は、壊してから売るべきですか?

先に壊さないでください。1981年5月31日以前に建てられた家なら、壊して売る場合に3,000万円まで控除できる特例があります。

田や畑を相続しました。すぐ売れますか?

すぐには売れません。農地を売るには農業委員会などの許可が必要で、買える相手も農業をする人に限られます。

きょうだいの1人が売却に反対しています。売れますか?

土地全体を売ることはできません。共有の不動産を売るには、共有者全員の同意が必要だからです。

亡くなった親が5年以内に買った土地です。税金は高くなりますか?

高くなる場合があります。売った年の1月1日で5年以下なら税率は39.63%、5年を超えていれば20.315%です。

この記事のまとめ

  1. 名義を変えるまで売れない:3年以内の申請が義務です
  2. 手取りは売値の7〜9割:更地の場合。測量や取り壊しでさらに下がります
  3. 買った値段の書類を探す:手取りが数百万円変わります
  4. 相続税を払ったなら3年10か月:過ぎると取得費加算が使えません

出典・根拠:不動産登記法第76条の2・第164条第1項(相続登記は取得を知った日から3年以内、令和6年4月1日施行。施行前の相続は令和9年3月31日まで)・第76条の3(相続人申告登記)。所得税法第60条第1項(被相続人の取得日・取得費を引き継ぐ)。租税特別措置法第31条・第32条(長期20.315%、短期39.63%。譲渡した年の1月1日の所有期間5年超で判定)。同第31条の4の取扱い(取得費が不明なら「売った金額の5パーセント相当額を取得費とすることができます」)。同第39条(取得費加算=相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年まで。加算額は相続税額×譲渡財産の相続税評価額÷取得財産の価額等)。同第35条第3項(空き家の3,000万円特別控除。令和9年12月31日までの譲渡、相続人3人以上は2,000万円)。同第35条の3(低未利用土地等の100万円特別控除。適用期限は令和10年12月31日まで延長済み。※国税庁ページの表示が改正前の令和7年12月31日のままの箇所がある)。地方税法第349条の3の2(住宅用地の特例。取り壊すと適用外)。登録免許税法別表第一(相続の登記は評価額の0.4%)。民法第251条・第258条(共有物の処分は全員の同意)。農地法第3条・第5条・第3条の3。相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(令和5年4月27日施行。審査手数料14,000円/筆、負担金は原則20万円)。宅地建物取引業法第46条・建設省告示第1552号(令和6年7月1日施行の低廉な空家等の特例)。国税庁タックスアンサーNo.3202・3208・3211・3226・3258・3267・3306。測量費40万〜80万円、取り壊し費100万〜200万円、司法書士報酬6万〜10万円は、法定ではない実務上の目安です。計算機と早見表の数値はすべて概算で、買ったときの値段は売値の6割、取得費加算は売値の8%と仮定しています。正確な金額は専門家または管轄の税務署・法務局・市区町村にご確認ください。

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