【2026年最新】マンション相続税評価額の計算方法と新ルール

マンション相続税評価額の解説記事アイキャッチ。タワーマンション1棟と、相続税0〜3900万円増と示す回答バッジ

時価3億円・築5年の都心タワーマンション高層階。子1人で相続するなら、2024年の改正で相続税は最大およそ3,900万円増えます。子2人なら最大およそ2,700万円です。一方、3階建ての低層マンションや郊外のマンションで築20年を超えていれば、増額は0円です。

あなたのマンション相続税の増額(概算)この記事の読み方
タワマン高層階・築浅・時価3億円+1,700〜2,700万円全体+税理士相談
タワマン高層階・築浅・時価1億円+110〜280万円全体を読む
低層(3階建て)・築20年超±0円節税と出口だけ
郊外・築20年超±0円節税と出口だけ

※ 相続人が子2人・遺産はこのマンションだけとした概算です。実際の税額は物件の条件で変わります。

低層や郊外で築20年を超えるマンションをお持ちの方は、増税の影響はありません。今からできる節税持ち続ける・売る・貸すの選び方だけお読みください。

本記事を読むと、(1)あなたのマンションが新ルールの対象か15秒で判定でき、(2)増える税額を自分で試算でき、(3)節税策と保有・売却・賃貸の出口を選べます。

マンションの相続税、何で決まる?

マンションの実勢価格と相続税評価額を2本のカラムで対比し、評価額が時価より低いことを示す図解
図1:相続税がかかるのは時価ではなく評価額。一戸建てで6割、タワマンで2〜3割まで下がる

ひとことで言うと、税金は「買った値段」でも「売れる値段」でもなく、相続税評価額という別の値段で決まります。マンションの評価額は時価より低くなるのが普通です。

呼び方だいたいの水準使う場面
実勢価格(時価)実際に売れる値段売買
相続税評価額(一戸建て)時価の6割程度相続税の計算
相続税評価額(マンション)時価の3〜4割相続税の計算
相続税評価額(タワマン高層階)時価の2〜3割相続税の計算

評価額と時価は別物

相続税では、財産は「亡くなった日の時価」で数えるのが原則です。しかし実務では、土地は路線価、建物は固定資産税評価額というものさしを使います。路線価は公示価格のおよそ8割、固定資産税評価額は建築費の5〜6割が目安です。評価額が時価より低くなるこの差こそ、マンション節税の源泉でした。詳しくは評価額とは何かをご覧ください。

一戸建てとの決定的な違い

一戸建ては土地を1人で持つため、評価額は時価の6割程度に収まります。ところがマンションは1つの敷地を何十戸、何百戸で分け合うため、1戸あたりの土地の持ち分が驚くほど小さくなります。国税庁の調査では、マンションの評価額と時価の開きは平均2.34倍(平成30年分)。一戸建ての1.66倍より、はるかに大きかったのです。

評価額が分かっても税額は出ない

ここで多くの方がつまずきます。遺産の合計から基礎控除(=誰でも使える非課税枠)を引いた残りにだけ税金がかかるからです。

  1. 遺産の合計(評価額ベース)を出す
  2. 基礎控除=3,000万円+600万円×法定相続人の数 を引く
  3. 残りがあれば、法定相続分で分けて税率をかける

相続人が子2人なら基礎控除は4,200万円。評価額の合計がこれ以下なら相続税は0円です。時価1億円のタワーマンションでも、改正前の評価額はおよそ2,500万円。それだけが遺産なら、税金はかかりませんでした。

2024年の改正で何が変わった?

改正前と改正後のマンション評価額を左右で比較し、評価水準0.6未満の物件だけが引き上げられることを示す図解
図2:2024年の改正で評価額に下限ができた。評価水準0.6未満の物件だけが引き上がる

ひとことで言うと、2024年1月から区分所有補正率という係数が加わりました。評価額が低すぎる物件だけを引き上げる仕組みで、築浅・高層ほど増税、築古・低層は影響なしです。

項目改正前(2023年まで)改正後(2024年1月から)
土地の評価路線価×敷地権割合変更なし
建物の評価固定資産税評価額変更なし
補正なし区分所有補正率が加わる
評価の下限なし(時価の2〜3割も可能)市場価格理論値の6割
対象3階建て以上の居住用

タワマン節税が封じられるまで

マンションの評価額は時価の2〜3割まで下がります。現金1億円をタワーマンションに換えるだけで、課税対象が大きく縮みます。この手法が広がりすぎました。決定打は2022年4月19日の最高裁判決です。相続の直前に借入でマンションを買い、評価額を圧縮した事案でした。最高裁は国税庁の否認を認めます。国税庁はその後、評価方法そのものをルール化する道を選びました。

新しい計算式(乖離率と補正率)

新しいルールの中心は評価乖離率です。「この物件の評価額は、実力に比べてどれだけ低いか」を4つの数字から推計します。

変数係数効き方
築年数×ー0.033古いほど下がる
総階数指数×0.239高い建物ほど上がる
所在階×0.018上の階ほど上がる
敷地持分狭小度×ー1.195土地の持ち分が薄いほど上がる

この4つに固定値3.220を足したものが評価乖離率です。総階数指数は「総階数÷33」で、1.0を超えるときは1.0とします。敷地持分狭小度は「敷地の持ち分の面積÷部屋の面積」です。

次に評価水準(=1÷評価乖離率)を出します。判定はこれだけです。

  1. 評価水準が0.6未満 → 補正率=評価乖離率×0.6 をかけて評価額が上がる
  2. 評価水準が0.6以上1以下 → 補正なし(従来のまま)
  3. 評価水準が1より大きい → 補正率=評価乖離率 をかけて評価額が下がる

評価水準0.6未満なら補正、0.6以上なら補正なし。この線引きがすべてを決めます。0.6という数字は、一戸建ての平均乖離率1.66倍の裏返し(1÷1.66≒0.6)です。つまりマンションを一戸建てと同じ土俵に乗せる、という考え方です。

改正前・改正後の比較

時価1億円・築10年のタワーマンション高層階で見ます。改正前の評価額はおよそ2,500万円でした。評価乖離率は3.49、評価水準は0.29。0.6を下回るので補正がかかります。補正後は市場価格理論値の6割=5,280万〜6,720万円です。評価額はおよそ2.1倍になりました。

影響を受けるマンションの特徴

補正がかかりやすいのは、次の条件が重なる物件です。

  • 総階数が高い(タワーマンション)
  • 所在階が上の方
  • 築年数が浅い
  • 戸数が多く、1戸あたりの土地の持ち分が薄い

対象外のマンションと、逆に評価額が下がるケース

「対象外」と「対象だけれど補正なし」はまったく別の話です。ここは誤解が多いところです。

区分あてはまる物件結果
そもそも対象外2階建て以下築年数を問わず対象外
そもそも対象外3室以下の二世帯住宅対象外
そもそも対象外事業用・一棟所有・在庫対象外
対象だが補正なし評価水準0.6以上評価額は変わらない
対象で減額評価水準が1超評価額が下がる

最後の行に注目してください。3階建て・築40年・土地の持ち分が厚い物件で計算すると、評価乖離率は0.88、評価水準は1.13。1を超えるので評価額はむしろ12%ほど下がります。改正は増税一色ではありません。

つまり改正で節税が終わったのではなく、上限が「市場価格理論値の6割」というキャップに変わっただけです。「もう終わった」も「今まで通り」も、どちらも不正確です。

その評価額、根拠はどこに?

ひとことで言うと、根拠は法律・通達・判例の3階建てです。条文番号を並べるのはこの章だけ。必要な方はここをご確認ください。

根拠番号何を決めているか
法律相続税法22条財産は時価で評価する
通達財産評価基本通達路線価・固定資産税評価額
通達課評2-74・課資2-16マンションの補正ルール
通達財産評価基本通達 総則6項著しく不適当なら別扱い
判例最高裁 令和2(行ヒ)283号行きすぎた圧縮の否認
特例措置法69条の4小規模宅地等の特例

適用される条文と通達

出発点は相続税法22条です。「財産の価額は、取得の時における時価による」とだけ定めています。時価の具体的な測り方は、財産評価基本通達が受け持ちます。

マンションの補正ルールは、2023年(令和5年)9月28日付の法令解釈通達で新設されました。名前は「居住用の区分所有財産の評価について」です。この通達の番号が課評2-74・課資2-16です。番号が2つあるのは、国税庁の資産評価企画官と資産課税課の連名で出されたためです。別々の通達ではありません。

適用されるのは、2024年(令和6年)1月1日以後に相続・遺贈・贈与で取得した居住用の区分所有財産です。評価乖離率の4つの変数と係数を定めた別表も、評価水準0.6の線引きも、この通達とその質疑応答で示されています。適用から外れる物件の一覧も同じです。

なお、通達どおりの計算が著しく不適当と認められる場合は、財産評価基本通達の総則6項で別の評価がなされることがあります。その線引きを示したのが最高裁令和2(行ヒ)283号(2022年4月19日判決)です。

国税庁の公式ツールはどこにある?

国税庁は「居住用の区分所有財産の評価に係る区分所有補正率の計算明細書」というExcelの様式を配布しています。課評2-74・課資2-16にもとづく公式の計算用紙です。使い方は次の章の手順で説明します。手計算より公式ツールを使う方が確実です

評価額は自分で計算できる?

土地・建物・補正の3ステップで相続税評価額を計算する流れを示すフロー図解
図3:土地→建物→補正の3ステップ。国税庁の計算明細書を使えば自分でも計算できる

ひとことで言うと、できます。土地・建物・補正の3ステップです。必要な書類は登記事項証明書と固定資産税の納税通知書の2つだけです。

  1. ステップ1(土地):路線価 × 敷地全体の面積 × 敷地権割合
  2. ステップ2(建物):固定資産税評価額 をそのまま使う
  3. ステップ3(補正):ステップ1+2 × 区分所有補正率

ステップ1 土地(敷地利用権)

国税庁の路線価図で前面道路の路線価を調べ、登記事項証明書の敷地全体の面積と敷地権割合をかけます。路線価50万円/㎡、敷地2,000㎡、敷地権割合0.5%なら、50万円×2,000×0.005=500万円です。土地の形がいびつな場合の細かい調整は、概算の段階では省いて構いません。

ステップ2 建物(固定資産税評価額の調べ方)

建物は固定資産税評価額がそのまま評価額です。調べ方は3つあります。

  • 毎年4〜6月に届く固定資産税の納税通知書(課税明細書)を見る
  • 市区町村の窓口で固定資産評価証明書を取る(1件300円程度)
  • 市区町村で固定資産課税台帳を閲覧する

該当するのは納税通知書の「価格」または「評価額」の欄です。「課税標準額」とは別の数字なので注意してください。

ステップ3 補正をかける

ステップ1と2を足した金額に、評価乖離率から求めた区分所有補正率をかけます。評価水準が0.6以上なら補正はかからず、ここで終わりです。評価額が出たら次は相続税額。遺産の合計と家族構成から税額を出す手順は相続税の計算シミュレーションで確認できます。

国税庁エクセルツールの使い方

手計算に自信がなければ、国税庁の計算明細書を使います。

  1. 国税庁サイトから「区分所有補正率の計算明細書」をダウンロードする
  2. 登記事項証明書を見て「築年数」と「総階数」を入れる
  3. 相続する部屋の「所在階」を入れる
  4. 「部屋の面積」と「土地の持ち分の面積」(敷地全体×敷地権割合)を入れる
  5. 評価乖離率・評価水準・区分所有補正率が自動で表示される
  6. 表示された補正率を、自分で出した評価額にかける

【要差し替え】国税庁エクセルツールの実画面スクリーンショット(入力画面・出力画面)をここに挿入します。

あなたのマンションはいくら?

時価5,000万円・1億円・3億円のマンションで相続税の増額を3本のバーで比較した図解
図4:時価5,000万円なら増税0円、1億円で最大280万円、3億円で最大2,700万円

ひとことで言うと、下の計算機で物件タイプ・想定時価・築年数・相続人数を選ぶだけです。補正後の評価額と、増える相続税の目安が同時に出ます。

マンション相続税の評価額シミュレーション(概算)
補正後の相続税評価額:
相続税の増額:
※ 概算です。相続人は子だけとし、遺産はこのマンションだけ、配偶者の税額軽減は使わない前提で計算しています。正確な金額は土地の持ち分の面積・部屋の面積・路線価などで変わります。
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物件タイプ\想定時価5,000万円1億円3億円
タワマン高層階・築浅±0円+110〜280万円+1,700〜2,700万円
都心の中層・築浅±0円+110〜280万円+1,400〜2,200万円
低層・築20年超±0円±0円±0円
郊外・築20年超±0円±0円±0円

※ 相続人が子2人・遺産はこのマンションだけとした概算です。

5,000万円マンションの場合

時価5,000万円なら、どのタイプでも増額は0円です。補正後でも2,640万〜3,360万円にとどまり、子2人の基礎控除4,200万円を下回るからです。子1人(基礎控除3,600万円)でも同じです。遺産全体でいくらになるかは5,000万円の相続税はいくらかをご覧ください。

1億円マンションの場合

時価1億円・築10年のタワーマンション高層階なら、改正前の評価額はおよそ2,521万〜3,209万円。基礎控除4,200万円を下回るので、相続人が子2人だけなら相続税は0円でした。補正後は5,280万〜6,720万円に上がり、相続税は108万〜278万円です。0円だった税金が発生する。これが1億円クラスの一番の変化です

3億円超のタワマンの場合

時価3億円・築5年で見ます。改正前の評価額はおよそ7,223万〜9,193万円、補正後は1億5,840万〜2億160万円です。増額は相続人が子2人だけなら1,739万〜2,739万円、子1人だけなら2,671万〜3,946万円。金額が大きいほど税率も上がるため、増え方が跳ね上がります。

築年数でどう変わる

築年数は1年で評価乖離率を0.033ずつ下げます。タワーマンション高層階の評価水準は築5年で0.27、築30年でも0.35。タワマンは築30年でも評価水準が0.6に届かず、補正から逃げられません。一方、3階建ての低層マンションは築20年で0.65となり補正が外れます。築年数だけでは決まらないのです。

階数でどう変わる

所在階は1階ごとに評価乖離率を0.018押し上げます。同じタワーマンションの3階と40階では乖離率が0.666違い、評価額では2〜3割の差です。詳しくは次の章で掘り下げます。

あなたのマンションの評価額を知りたい方へ

この計算機は概算です。土地の持ち分の面積や路線価をもとにした正確な試算、売却した場合の手取りまで含めて、無料でご相談いただけます。

タワマンの高層階だけなぜ高い?

タワーマンションの低層階と高層階で相続税評価額の差を対比した図解
図5:同じタワマンでも3階は乖離率3.00、40階は3.67。上の階ほど評価が上がる

ひとことで言うと、土地の持ち分が薄いうえに、階が上がるほど時価だけが跳ね上がるからです。評価額が時価に追いつけず、その差を補正が埋めにいきます。

総階数40階・築10年3階40階
所在階の寄与+0.054+0.720
評価乖離率およそ3.00およそ3.67
評価水準0.330.27
補正の有無ありあり

区分所有ならではの仕組み

区分所有では、建物は部屋の固定資産税評価額、土地は敷地全体に持ち分をかけたものです。戸数が多いほど土地の持ち分は薄くなり、40階建て・300戸なら1戸の持ち分が部屋の面積の1〜2割しかないこともあります。土地が薄く建物が厚い。この構成が時価と評価額の開きを生みます

高層階ほど上がる理由

眺望のよい高層階は、同じ広さでも低層階より時価が高くなります。ところが固定資産税評価額は階数でほとんど変わりません。時価だけが上がり評価額は据え置き。だから開きが広がります。新しいルールは、この構造を所在階×0.018として数式に取り込みました。

方角・眺望は評価に入らない

角部屋・南向き・眺望のよさは評価額に反映されません。数式に入るのは築年数・総階数・所在階・面積の4つだけです。人気の高い住戸ほど時価との開きが残りやすく、相続財産としては有利に働きます。ただし同じ評価額でも、売ったときの手取りは住戸の条件で大きく変わります。

賃貸中・投資用の場合

人に貸しているマンションも、居住用の区分所有財産として補正の対象です。住んでいるのが本人か借りている人かは問いません。ただし賃貸中は建物を30%、土地を2割弱下げられるため、補正後の評価額からさらに圧縮できます。複数の部屋を持つ場合は、部屋ごとに計算明細書が必要です。

今からできる節税はある?

ひとことで言うと、王道の節税策は改正後もそのまま使えます。補正は評価額の下限を決めただけで、特例や控除には手を付けていません。

手段効果主な条件
小規模宅地等の特例土地が330㎡まで80%引き同居や家なき子など
配偶者の税額軽減1億6,000万円まで0円配偶者が相続する
暦年贈与年110万円まで非課税7年以内は持ち戻し
相続時精算課税年110万円は持ち戻しなしいったん選ぶと戻せない
賃貸に出す建物30%・土地2割弱減相続時に賃貸中であること

生前贈与を使う

年110万円までの贈与は税金がかかりません。ただし2024年から、亡くなる前7年以内の贈与は相続財産に戻して数えます(改正前は3年)。早く始めるほど有利です。相続時精算課税を選べば年110万円の枠は持ち戻しの対象外ですが、一度選ぶと暦年贈与には戻れません。

小規模宅地等の特例

自宅の土地は330㎡まで評価額が80%引きになります。マンションの土地の持ち分は小さいので330㎡にはまず収まります。都心マンションほどこの特例の効き目が大きくなります。配偶者が相続するなら無条件、同居していた子なら住み続けることなどが条件です。詳しい要件は小規模宅地の特例で解説しています。

配偶者の税額軽減

配偶者が相続する分は、1億6,000万円か法定相続分のどちらか多い方まで相続税がかかりません。ただし配偶者が亡くなったときの二次相続では使えません。目先の税額だけで配分を決めると、次の相続で損をすることがあります。

不動産小口化商品

1棟のビルやマンションを1口100万円程度に分けて売り出す商品です。相続税では2つの型で扱いがまったく違います。

  • 任意組合型:現物の不動産と同じ扱い。路線価などで評価するため圧縮が効きます
  • 匿名組合型:金銭債権として額面どおりの評価。圧縮は効きません

節税目的なら任意組合型です。ただし2024年の補正ルールは居住用の区分所有財産が対象です。その住戸を組み込んだ商品では補正がかかるため、商品ごとの確認が要ります。

マンションが節税になる原理と、駆け込み購入のリスク

原理は単純です。現金1億円は1億円のまま数えられます。時価1億円のマンションなら、評価額は改正後でもおよそ6,000万円。課税される金額だけが縮みます。

ただし限度があります。相続の直前に借入でマンションを買う駆け込み節税は否認されるリスクがあります。最高裁は2022年4月19日の判決で、実態のない圧縮の否認を認めました(根拠は前掲の総則6項)。購入の目的・時期・借入の実態が問われます。また、親が認知症になると契約ができません。動ける時期は思ったより短いのが実情です。

評価額に自信がないときは?

ひとことで言うと、まず税理士にチェックしてもらうのが現実的です。不動産鑑定士の出番は、通達どおりの評価が実態と大きくずれる例外的な場面に限られます。

手段費用の目安向く場面
税理士のチェック申告報酬に含まれるほぼすべての人
不動産鑑定士の鑑定30万〜50万円評価が実態とずれる時
自分で計算0円概算をつかむ段階

不動産鑑定士に頼む

鑑定評価は、通達どおりの評価が実態とかけ離れているときに使います。事故物件、極端に古い建物、再建築ができない土地などです。ただし税務署が認めるとは限らず、使いどころは限られます。

税理士にチェックしてもらう

相続に詳しい税理士なら、評価額の妥当性を申告報酬の範囲で確認してくれます。区分所有補正率の適用漏れ、小規模宅地等の特例の使い方など、金額の大きい論点をまとめて見てもらえます。

自分で間違えやすいところ

  • 固定資産税の「課税標準額」を評価額と取り違える
  • 敷地権割合の桁を読み違える(0.5%と0.05%など)
  • 総階数に地階を含めてしまう(地階は含めません)
  • 所在階をメゾネットの上の階で数える(低い方の階です)
  • 2階建て以下なのに補正をかけてしまう

納税するお金が足りないときは?

ひとことで言うと、選択肢は売却・延納・物納の3つです。現実的なのは売却です。物納は条件が厳しく、実際に使える場面はごく限られます。

手段現実性注意点
売却して納める高い売却に3〜6か月かかる
延納利子税と担保が必要
物納低い延納でも無理な場合だけ

売って納税資金をつくる

もっとも確実な方法です。ただしマンションが売れるまで3〜6か月はかかります。遺産分割協議、相続登記、査定、募集、契約、引き渡しという順番です。申告期限の10か月から逆算すると、動き出しは早いほど安全です。

物納は現実的か

物納は、延納によっても金銭で納めることが難しい場合にだけ認められます。まず延納が検討され、それでも無理なときに初めて物納の話になります。境界がはっきりしない土地や争いのある不動産は受け付けてもらえません。実務では例外的な手段です。

延納の利子税

延納は相続税を分割で納める制度です。最長20年まで延ばせますが、利子税がかかり担保も必要です。不動産の割合が高いほど期間を長く取れます。売って一括で納めるか、延納で持ち続けるか。どちらが得かは利子税と家賃収入を比べて判断します。

10か月の期限

相続税の申告と納付は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。この期限は延びません。遺産分割がまとまらない場合でも、いったん法定相続分で申告して納める必要があります。

売却で納税資金を確保するなら

相続したマンションがいくらで売れるか、いつまでに動けば10か月に間に合うか。相続に強い専門家が無料で査定・ご相談に応じます。

持ち続ける?売る?貸す?

相続したマンションを保有・売却・賃貸の3つに分岐して比較したフロー図解
図6:住む予定なら持ち続ける、売るなら3年10か月以内、手放したくないなら貸す

ひとことで言うと、期限から逆算して決めます。売るなら3年10か月以内が有利です。都心の築浅なら売却、住む予定があるなら保有が基本線です。

選択肢向く人期限
持ち続ける住む予定がある
売る納税資金が要る3年10か月以内
貸す手放したくない

持ち続ける

自分や家族が住むなら保有です。小規模宅地等の特例を使えるうえ、住み替え費用もかかりません。ただし管理費・修繕積立金・固定資産税は毎年かかり、空き家のまま持つと出ていくだけになります。

売る(3年10か月以内)

相続から3年10か月以内に売れば、納めた相続税の一部を取得費に加算できます。取得費が増えれば、売却益にかかる譲渡所得税が減ります。相続税を払った人だけが使える特例です。期限を過ぎると使えないため、売る可能性があるなら早めに動きます。

貸す

賃貸に出すと家賃収入が入り、評価額も下がります。一方で入居者が付かないリスク、原状回復の費用、管理の手間が加わります。賃貸中の物件は売るときに買主が限られ、値段も下がりやすくなります。

都心マンションならどれか

都心の築浅マンションは、時価と評価額の開きが大きい資産です。持ち続ければ相続財産としては有利ですが、税額そのものは改正で増えました。住む予定がなく納税資金にも不安があるなら、3年10か月以内の売却がもっとも合理的です。

保有・売却の判断に迷ったら

持ち続けた場合の年間コスト、売った場合の手取り、貸した場合の利回り。3つを同じ土俵で比べた資料をご用意します。

よくある質問

ひとことで言うと、個別事情の疑問はここでまとめて解消できます。気になる項目だけお読みください。

評価額が時価より低いのはなぜですか?

土地は路線価(公示価格のおよそ8割)、建物は固定資産税評価額(建築費の5〜6割)を使うためです。すぐに売れるとは限らない資産なので、安全側に低く見積もる設計です。

2024年の改正で評価額はどれくらい上がりましたか?

補正の対象になった物件でおおむね1.5〜2倍です。都心のタワーマンション高層階では2倍を超え、時価の2〜3割だった評価額が市場価格理論値の6割まで引き上げられました。低層や築古の多くは補正がかからず、変わっていません。

共有名義のマンションはどう評価しますか?

まず1戸全体の評価額を出し、そこに持分の割合をかけます。評価乖離率は住戸ごとに計算するため、持分が何分の1でも補正率は変わりません。

配偶者居住権が設定されている場合はどうなりますか?

先にマンション全体の評価額(補正後)を出し、配偶者居住権と、居住権が付いた所有権とに分けます。配偶者の年齢や平均余命をもとに配分するため、配偶者が若いほど居住権の評価が大きくなります。計算は複雑なので税理士にご確認ください。

借入で購入したマンションの評価はどうなりますか?

評価方法は現金で買った場合と同じで、借入残高は債務控除として遺産総額から差し引きます。ただし相続の直前に多額の借入で買う手法は、最高裁の令和4年4月19日判決で否認された例があります。

海外に住んでいる人が相続する場合は?

日本国内のマンションは、相続する人がどこに住んでいても日本の相続税の対象で、評価方法も同じです。ただし納税管理人を選ぶ必要があり、期限は10か月のまま。書類のやり取りを考えると早めの着手が欠かせません。

評価額に納得できない場合はどうすればよいですか?

不動産鑑定士に鑑定評価を依頼し、通達どおりの評価が実態とずれていることを示す方法があります。ただし認められるのは例外的な場面に限られ、費用も30万〜50万円かかります。まずは税理士に妥当性を確認してもらうのが現実的です。

改正前に相続した場合、さかのぼって適用されますか?

さかのぼりません。新しい評価方法が使われるのは、2024年(令和6年)1月1日以後に相続・遺贈・贈与で取得したマンションだけです。2023年12月31日までに相続が発生していれば従来どおりで、申告のやり直しも不要です。

まとめ|押さえるべき5つのポイント

ひとことで言うと、5つだけ覚えて帰れば十分です。次に取るべき行動まで見えてきます。

5つのポイント

  1. 課税されるのは評価額:買った値段でも売れる値段でもありません。マンションの評価額は時価の3〜4割、タワマン高層階なら2〜3割でした。
  2. 2024年から下限ができた:評価水準が0.6未満の物件だけ、市場価格理論値の6割まで引き上げられます。2階建て以下は対象外、築古・低層は補正なしです。
  3. 計算は3ステップ:土地(路線価×敷地権割合)、建物(固定資産税評価額)、補正(国税庁の公式ツール)の順です。
  4. 節税の王道は健在:小規模宅地等の特例で80%引き、配偶者の税額軽減で1億6,000万円まで0円。ただし駆け込み購入は否認されます。
  5. 出口は期限から逆算:納税は10か月、取得費加算は3年10か月。持つ・売る・貸すは数字で比べて決めます。

改正で節税が終わったわけではありません。上限が「市場価格理論値の6割」に変わっただけです。この一点を押さえておけば、判断を誤ることはありません。

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この記事の監修者【要差し替え】
監修者〇〇 〇〇(相続専門税理士)
税理士登録番号第000000号
所属〇〇税理士事務所
経歴相続税申告〇〇件の実績

出典・根拠

  • 国税庁 法令解釈通達「居住用の区分所有財産の評価について」課評2-74・課資2-16(令和5年9月28日付)、および同通達にもとづく「区分所有補正率の計算明細書」
  • 国税庁 タックスアンサー No.4667(居住用の区分所有財産の評価。評価乖離率・評価水準・区分所有補正率の別表)/No.4602(土地家屋の評価)/No.4152・No.4155(相続税の計算と税率)/No.4205(申告と納税)
  • 国税庁 タックスアンサー No.4124(小規模宅地等の特例)/No.4158(配偶者の税額の軽減)/No.4161(暦年課税)/No.4103(相続時精算課税)/No.3267(取得費加算)/No.4211(延納)/No.4214(物納)
  • 相続税法 第22条(評価の原則)/租税特別措置法 第69条の4(小規模宅地等の特例)/財産評価基本通達(路線価方式・固定資産税評価額・総則6項)
  • 最高裁判所第三小法廷 令和4年4月19日判決(令和2(行ヒ)283号
  • 国税庁「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議」資料(マンションの乖離率 平均2.34倍・平成30年分/一戸建て 平均1.66倍)

本記事は2026年7月17日時点の法令・通達(課評2-74・課資2-16ほか)にもとづき、年4回更新します。個別の税務判断は必ず税理士にご確認ください。

【要差し替え】運営会社:株式会社〇〇(代表者:〇〇 〇〇/所在地:東京都〇〇区/宅地建物取引業免許:東京都知事(〇)第000000号/設立:20〇〇年)。公開日:2026年7月17日/最終更新日:2026年7月17日。

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