小規模宅地の特例で相続税はいくら減る?── 実家の土地80%減を使える人・使えない人

親の家や土地を相続すると、「相続税」という税金がかかることがあります。「小規模宅地の特例」を使えば、5,000万円の土地を1,000万円の土地とみなして税金を計算できるため、相続税はおよそ400万〜1,200万円安くなります。ただし、この特例には「誰が相続するか」「いつまで住み続けるか」といった条件があり、1つでも満たさないと割引は受けられません。
| あなたの状況 | 税金はいくら安くなる?(目安) | この記事の読み方 |
|---|---|---|
| 同居の子が実家(土地5,000万円・330㎡以内)をもらう | 400万〜1,200万円 安くなる | 計算機で3秒診断 |
| 別居で賃貸暮らしの子がもらう(家なき子候補) | 400万〜1,200万円 安くなる(条件クリア時) | 家なき子の6条件を必読 |
| 別居で持ち家ありの子がもらう | ±0円(使えない) | 4ステップと落とし穴で対策 |
| 配偶者が自宅をもらう | 別の割引と合わせて実質0円になることも | FAQもチェック |
※ あくまで目安です(2〜3割の幅があります)。財産の合計額や相続人の人数によって変わります。
相続する土地がない方(財産が預貯金だけ・借家住まいだった方)には、この特例は使えません。賃貸アパート・駐車場・お店の土地を引き継ぐ方は、種類別の表の「貸付事業用・特定事業用」の行を見てください。
この記事を読むと:
- 自分がこの特例を使えるか(配偶者・同居・別居)が15秒でわかります
- 計算機で、税金がいくら安くなるかを3秒で試せます
- 期限までにやること4つと、割引が消える失敗パターンがわかります
小規模宅地の特例で相続税はいくら減る?

ひとことで言うと──自宅の土地は330㎡まで「8割引き」で税金を計算できる制度です。5,000万円の土地なら1,000万円として扱われ、相続税はおよそ400万〜1,200万円安くなります。
まず前提から整理します。人が亡くなると、その人の財産は家族が引き継ぎます。これが相続です。財産が多いと「相続税」という税金がかかります。
土地の相続税は、「その土地がいくらの土地か」をもとに計算します。この税金計算用の値段を評価額といいます。実際の売値より少し安めに決まる、税務署向けの値札だと思ってください。
小規模宅地等の特例とは、亡くなった親の自宅などの土地について、この評価額を8割引きにして税金を計算できる制度です。「小規模」という控えめな名前ですが、効果は相続税の割引の中で最大級です。都市部の実家なら、使えるかどうかで数百万円〜数千万円の差がつきます。
| 土地の種類 | 割引が使える広さ | 割引率 | 税金の安くなり方(5,000万円の土地の例) |
|---|---|---|---|
| 自宅の土地(特定居住用宅地等) | 330㎡まで | 80%引き | 400万〜1,200万円 安くなる |
| お店・工場の土地(特定事業用宅地等) | 400㎡まで | 80%引き | 400万〜1,200万円 安くなる |
| 賃貸アパート・駐車場の土地(貸付事業用宅地等) | 200㎡まで | 50%引き | 250万〜750万円 安くなる |
対象の土地は表のとおり3種類。ほとんどの方に関係するのは1行目の「自宅の土地」です。330㎡までの部分は、評価額の8割に税金がかからなくなります。330㎡は約100坪です。都市部の戸建てやマンションなら、まず全部この枠に収まります。なお、自宅とお店の土地は両方使えます(合計730㎡まで。賃貸用を混ぜるときだけ枠の調整計算が入ります)。
なぜ8割も安くなるのか
理由は「残された家族から住む家を奪わないため」です。自宅の土地に満額の税金をかけると、税金を払うために家を売るはめになりかねません。そこで国は大きく割り引く代わりに、「本当にその家で暮らしていく人が引き継ぐこと」を細かい条件で確認します。条件が厳しいのは、割引が大きいことの裏返しです。
実際にいくら安くなるのか(実家5,000万円の例)
お父さんが亡くなり、土地5,000万円(300㎡)・建物1,000万円・預貯金3,000万円を、子2人で相続するとします。
※ 相続税には「基礎控除」という誰でも使える非課税枠があります。3,000万円+600万円×相続人の数。今回は2人なので4,200万円です。
特例を使わない場合
- 財産を全部足す → 5,000万+1,000万+3,000万=9,000万円
- 非課税枠を引く → 9,000万−4,200万=4,800万円に税金がかかる
- 相続税は2人合わせて約640万円
特例を使った場合
- 土地は8割引きの1,000万円として計算 → 財産の合計は5,000万円
- 非課税枠を引く → 5,000万−4,200万=800万円に税金がかかる
- 相続税は2人合わせて約80万円
その差、約560万円。しかも相続税は財産が多いほど税率が上がるしくみなので、財産が大きい家ほど、同じ8割引きでも安くなる金額はもっと大きくなります。
あなたは使える?3つの取得者パターンで即診断

ひとことで言うと──使えるかどうかは「誰が土地をもらうか」でほぼ決まります。配偶者なら無条件。同居の子は「住み続ける」が条件。別居の子は「家なき子」の6条件クリアが必要です。
| 誰が土地をもらう? | 使える? | 条件 |
|---|---|---|
| 配偶者 | ○ | 条件なし(もらうだけでOK) |
| 同居していた子・家族 | ○ | 申告期限まで住み続けて、持ち続ける |
| 別居の子(持ち家なし) | △ | 「家なき子」6条件をすべてクリア(次の章) |
| 別居の子(持ち家あり) | × | 原則使えない |
ポイントは3パターンだけです。配偶者は無条件。同居の子は「申告期限まで住み続けて、持ち続ける」が条件。別居の子は、次の章の「家なき子」に当てはまる場合だけ使えます。逆に言うと──同じ実家でも、誰が何をもらうか決める家族会議(遺産分割協議)で「土地をもらう人」を間違えるだけで、数百万円の割引が消えます。そのため「誰がもらえば特例を使えるか」から逆算して決めるのが鉄則です。
住民票を移すだけでは「同居」になりません
同居かどうかは、住民票の住所ではなく「実際に一緒に暮らしていたか」で判断されます。どこで寝起きしていたか、生活費はどうしていたか、家財道具はあるか。そういう暮らしの実態を総合的に見られます。介護のための泊まり込みや、住民票だけ移した「かたちだけの同居」は、税務署に認められない典型パターンです。判断が微妙なケースこそ、申告の前に専門家に確認してもらう価値があります。
別居でも使える?家なき子の6条件
ひとことで言うと──亡くなった方に配偶者も同居家族もいなくて、あなたが3年以上ずっと賃貸暮らしなら、別居のままでも8割引きを使えます。通称「家なき子特例」です。
- ① 日本国内に住んでいる(海外在住の一部の方は対象外)
- ② 亡くなった方に配偶者がいない
- ③ 亡くなった方と同居していた相続人がいない
- ④ 亡くなる前の3年間、自分や配偶者・近い親族などが持つ家に住んだことがない(=ずっと賃貸暮らし)
- ⑤ いま住んでいる家を、過去に自分が持っていたことがない
- ⑥ その土地を申告期限まで持ち続ける
「家なき子」とは、この6つを全部満たす別居の家族のことです。核心はシンプルです。持ち家のない別居の子なら、同居していなくても8割引きを使えます。よくあるのは、転勤でずっと賃貸暮らしの子が、一人暮らしだった親の実家を相続するケースです。
「賃貸のフリ」は通用しません
注意すべきは④と⑤です。以前は「自分の家を配偶者名義にして持ち家なしを装う」「家を親族に売って、そのまま住み続ける」といった抜け道がありました。しかし2018年の法改正で、すべて塞がれています。「3年以内に配偶者名義の家に住んでいた」「いまの家は昔、自分の持ち家だった」──これだけでアウトです。ネットの古い記事で判断せず、国税庁の公式ページ(タックスアンサーNo.4124)で最新の条件を確認してください。
マンション評価が上がった今こそ、この特例が効く

ひとことで言うと──2024年からマンションの税金計算用の値段は上がりました。一方で、この特例は「上がった後の値段」に効きます。そのため、マンションこそ使う価値が上がっています。
| 比べるポイント | 戸建て(都市部) | 分譲マンション |
|---|---|---|
| 土地部分の広さ | 100〜300㎡くらい | 持ち分は数㎡〜数十㎡ |
| 330㎡の枠に収まる? | ほぼ全部収まる | まず間違いなく全部収まる |
| 2024年の新ルールの影響 | なし(いままで通り) | 値段が安すぎた物件は引き上げ |
| 特例の効き方 | 土地の値段の8割が消える | 上がった後の値段の8割が消える |
実家がマンションの方は、「マンションの相続税が上がった」というニュースを見て不安かもしれません。たしかに2024年1月から計算ルールが変わり、実際の売値にくらべて税金計算用の値段が安すぎた物件は、値段が引き上げられました。タワマンで目立っていた「実際の価格と税金計算のズレ」を直すための見直しです。
ここからが重要な点です。この特例は値段が上がった後の評価額に対して効きます。しかもマンションの土地の持ち分は小さいので、ほぼ全部が330㎡の枠に収まります。つまり、上がったぶんも含めて8割引き。値上がりを特例が大きく巻き戻してくれる構図です。細かい計算方法は当サイトのマンション評価ガイドにゆずりますが、この記事では「マンションこそ、誰がもらうかの条件を外さないことが最優先」とだけ覚えれば十分です。
なお、「評価額が上がる前に、急いでマンションを買って節税しよう」という考え方は危険です。亡くなる直前の駆け込み購入のような行きすぎた節税は、税務署に認められないことがあります。裁判で負けて、約3億円を追加で払うことになった実例もあります。特例は「もともと持っている資産に正しく使う」が原則です。
申告期限までにやるべき4ステップと3つの落とし穴

ひとことで言うと──期限は「相続を知った日の翌日から10か月」。①使える人の確認 → ②誰がもらうか決める → ③書類をそろえる → ④期限内に申告、の順で進めれば間に合います。
- ステップ1:使える人を確認する── 配偶者・同居・家なき子のどれに当たるか、3パターンと6条件でチェック
- ステップ2:家族会議で「誰がもらうか」を決める── 条件を満たす人が土地をもらう形で、期限までに決着させる
- ステップ3:書類をそろえる── 計算明細書・遺産分割協議書のコピー・住民票や戸籍など
- ステップ4:10か月以内に申告する── 「特例を使います」と書いた申告書を税務署へ提出(納税も同じ期限)
いちばん多い失敗は、申告そのものを忘れることです。特例を使うと税金がゼロになる家庭は多いのですが、税金がゼロになる場合でも、期限内に申告しないと特例は使えません。「もともと非課税枠の中だから申告不要」と「特例を使ったらゼロになる」は、まったくの別物。特例でゼロにするには、申告書を出すことが条件です。
2つ目の失敗は、早く売りすぎること。同居の子と家なき子には「申告期限まで持ち続ける」条件があるので、期限より前に売ると、配偶者以外は特例が使えなくなります。売るなら、10か月の申告期限が過ぎてからにしましょう。なお、売ったときは、売った利益に別の税金(譲渡所得税)がかかります(持っていた期間が5年超なら税率約20%、5年以下なら約40%)。相続から3年10か月以内の売却なら税金が安くなる制度(取得費加算)もあるので、売るタイミングは全体で設計しましょう。
3つ目は、家族の話し合いがまとまらないことです。期限までに「誰がもらうか」が決まらないと、特例は使えません。ただし救済策があります。「申告期限後3年以内の分割見込書」という書類を付けて、先に申告しておくこと。そうすれば話し合いがまとまった後に手続きをして、払いすぎた税金を返してもらえます。もめそうな家庭ほど、この1枚を忘れないでください。
誰がもらうべきか・いつ売るべきかは、家族構成と物件によって答えが変わります。
よくある質問
読者からよく届く5つの質問に答えます。
Q1. 特例で相続税がゼロになる場合でも、申告は必要ですか?
A. 必要です。「特例を使います」と書いた申告書を期限内に出すことが、割引の条件だからです。「ゼロだから何もしなくていい」という思い込みが最も危険です。
Q2. 家族の話し合いがまとまらないまま期限が来たらどうなりますか?
A. 「申告期限後3年以内の分割見込書」を付けて、いったん申告しておきましょう。話し合いがまとまった後に手続きをすれば、特例を使って税金を取り戻せます。何も出さずに期限を過ぎるのが最悪のパターンです。
Q3. 実家が分譲マンションでも使えますか?
A. 使えます。マンションの土地の持ち分も対象です。2024年のルール変更で値段が上がった物件ほど、8割引きの効果は大きくなります。
Q4. 親が老人ホームに入ったまま亡くなりました。自宅は対象になりますか?
A. 対象になり得ます。要介護認定などを受けて入居しており、空いた自宅を賃貸に出したりしていなければ問題ありません。入居の経緯と、家の使い方がポイントです。
Q5. 二世帯住宅でも「同居」になりますか?
A. 建物の登記が1つなら、玄関が別でも一棟まるごと同居扱いになるのが原則です。フロアごとに登記が分かれている(区分所有登記)と扱いが変わるので、まず登記を確認してください。
まとめ
ひとことで言うと──「誰がもらうか」と「期限内の申告」。この2つさえ外さなければ、実家の相続税は桁違いに軽くできます。
3点要約
- いくら安くなる?:自宅の土地は330㎡まで評価額8割引き。5,000万円の土地なら、税金はおよそ400万〜1,200万円安くなります(賃貸用の土地は200㎡まで5割引き)。
- 誰が使える?:配偶者は無条件。同居の子は「住み続けて持ち続ける」。別居の子は家なき子6条件。家族会議は「誰がもらえば使えるか」から逆算して決めましょう。
- 何をする?:期限は10か月。税金ゼロでも申告必須。配偶者以外は期限前に売らない。マンションは上がった後の値段に特例が効くので、条件確認が最優先。
出典・根拠:国税庁タックスアンサーNo.4124(小規模宅地等の特例)/租税特別措置法69条の4/マンション評価の新ルール(国税庁・令和5年 課評2-74)/相続直前取得の否認例(最高裁 令和4年4月19日判決)
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