評価額とは?不動産の値段は4つある── 税額計算に使う評価額は売値の約8割

評価額とは?不動産の値段は4つある——白いデスクの家の模型の軒先から下がる値札が「評価額は売値の約8割」という答えを示すイラスト。同じ家に、売値とは別の税金用の値段があることを表し、かたわらに電卓が置かれている。

親の家や土地を相続すると、「評価額」という言葉に必ず出会います。評価額とは、税金などの計算に使う不動産の値段のことです。実際に売れる値段とは別物で、土地なら目安は市場水準のおよそ8割。どの評価額を見るかを間違えると、税額の見積もりは数百万円単位でずれます

あなたの状況見るべき評価額水準の目安この記事の読み方
実家の土地・建物を相続する路線価(土地)+固定資産税評価額(建物)土地は市場水準のおよそ8割調べ方税額の目安
実家が分譲マンション相続税評価額(2024年から補正あり)評価額が上がった物件あり下の案内から専用記事へ
固定資産税の通知書を見ている固定資産税評価額公示価格のおよそ7割4つの違い
売却を考えている実勢価格(売値)評価額より高いことも多い売値との関係FAQ

※ 水準はあくまで一般的な目安です。地域・物件・市場の状況によって変わります。

実家が分譲マンションの方は、評価額の計算方法が特殊です。マンション相続税評価額の計算方法と新ルールをあわせてお読みください。株式や車など、不動産以外の評価額はこの記事では扱いません。

この記事を読むと:

  1. 4つの評価額のうち、自分がどれを見るべきかが15秒でわかります
  2. 実家の評価額を、手元の書類と無料サイトで自分で調べられるようになります
  3. 評価額から相続税の目安を出せます(早見表と計算機つき)

評価額とは?売値とどう違う?

売値と評価額の違いを2枚の値札で対比する図解。評価額は土地なら市場水準の7〜8割

ひとことで言うと──評価額とは、税金などの計算のために国や市区町村が決めた不動産の値段です。実際に売れる値段(売値)とは別物です。

比べるポイント売値(実勢価格)評価額
誰が決める?売り手と買い手の合意国や市区町村
いつ決まる?売買のたびに変わる毎年または3年ごとに決まる
何に使う?売買の取引相続税・固定資産税などの計算
水準は?市場しだい低め(土地は市場水準の7〜8割が目安)

同じ実家でも、「売ったらいくらか」と「税金の計算上いくらか」は別の数字です。売値は、そのときの買い手との交渉で決まります。一方、税金の計算には、売値ではなく評価額を使います。評価額は「税務署や市区町村向けの値札」だと考えてください。

なぜ売値と評価額が分かれているのか

売値は相手や時期によって大きく変わります。変わりやすい数字を税金の土台にすると、計算が不安定で不公平になります。そこで国や市区町村は、決まった時点の値段を調べて公表します。全国で同じルールなので、誰の税金も同じ土台で計算できます。低めに設定されているのは、市場の変動があっても取りすぎにならないようにするためです。

評価額から売値の目安を逆算するには

手元に固定資産税の通知書しかなくても、市場水準の目安は逆算できます。

  1. ① 通知書に載っている土地の評価額を0.7で割ります
  2. ② 出てきた数字が、公示価格(市場の標準的な水準)の目安です
  3. ③ 実際の売値は、この目安から上下にぶれます

たとえば土地の固定資産税評価額が3,500万円なら、3,500万円÷0.7=5,000万円が標準水準の目安です。あくまで机上の目安なので、売却を考えるときは査定も併用してください。

4つの評価額はどう違う?

実勢価格・公示価格・路線価・固定資産税評価額という4つの評価額を並べたパネル図解

ひとことで言うと──よく使う評価額は4つあります。相続の場面で見るのは「路線価」と「固定資産税評価額」の2つです。

名前何に使う?誰がいつ決める?水準の目安どこで見る?
実勢価格(売値)売買市場・そのつど基準になる値段査定・取引事例
公示価格土地取引の目安・公的な値段の基準国が毎年1月1日時点で調べ、3月に公表市場の標準水準不動産情報ライブラリ
路線価相続税・贈与税の計算国税庁が毎年1月1日時点で定め、7月に公表公示価格のおよそ8割路線価図・評価倍率表
固定資産税評価額固定資産税などの計算市区町村が3年ごとに見直し公示価格のおよそ7割納税通知書の課税明細書

「一物四価(いちぶつよんか)」という言葉があるほど、不動産の値段は複数あります。ただ、覚えることはシンプルです。相続税で見るのは路線価、固定資産税で見るのは固定資産税評価額です。この2つの場所さえ覚えれば、日常の手続きはほぼ足ります。

実勢価格(売値)──市場で決まる今の値段

実際の売買で成立する値段です。需要と供給で決まるため、同じ家でも時期によって変わります。残りの3つの評価額は、この実勢の世界とは別に、公的なルールで決められています。

公示価格──公的な値段のものさし

国が毎年1月1日時点の標準的な土地の値段を調べ、3月に公表するものです。土地取引の目安であり、路線価や固定資産税評価額の元になる基準でもあります。

路線価──相続税の計算に使う値段

国税庁が道路ごとに定める、1平方メートルあたりの土地の値段です。毎年1月1日時点の価格が7月に公表されます。水準は公示価格のおよそ8割です。相続税では、この路線価に土地の面積をかけた金額が土地の評価額の目安になります。なお分譲マンションは、2024年1月以後の相続から、国の新しい通達で評価額が引き上げられた物件があります。

固定資産税評価額──毎年の税金の土台

市区町村が決める値段で、固定資産税のほか、不動産を買ったときや名義変更のときの税金の計算にも使われます。土地の水準は公示価格のおよそ7割です。建物の評価額はこの固定資産税評価額しかなく、相続税でも建物はこの金額をそのまま使います。

そのほかの評価額──基準地価と鑑定評価額

補助的な値段として、あと2つ知っておくと安心です。基準地価は、都道府県が毎年7月1日時点で調べて9月に公表する値段です。公示価格を補い、年の後半の動きを反映します。不動産鑑定評価額は、国家資格を持つ不動産鑑定士が個別に算定する値段です。遺産分割でもめたときや裁判など、厳密な値段が必要な場面で使われます。

実家の評価額はどこでわかる?

実家の評価額を調べる手順の図解。納税通知書と路線価図を確認し、路線価×土地の面積で計算する

ひとことで言うと──「固定資産税の納税通知書」と「路線価図」の2つで、実家の評価額はわかります。どちらも取り寄せや費用は不要です。

  1. ① 毎年春に届く固定資産税の納税通知書を開き、課税明細書の「価格(評価額)」欄を見る(土地と建物の固定資産税評価額がわかります)
  2. ② 国税庁の「路線価図・評価倍率表」のサイトで、実家の前の道路に付いた路線価(1平方メートルあたりの値段)を見る
  3. ③ 路線価×土地の面積を計算する(相続税に使う土地の評価額の目安がわかります)

納税通知書と路線価図の2つがあれば、自分で調べられます。どちらも無料です。面積は通知書の課税明細書か、登記の資料に書かれています。

計算例──路線価30万円・150㎡の実家

この記事では、次の実家を例に使います。

  1. ① 前の道路の路線価が30万円/㎡、土地の面積が150㎡
  2. ② 土地の評価額の目安=30万円×150㎡=4,500万円
  3. ③ 建物は課税明細書の固定資産税評価額500万円をそのまま使う → 実家全体で5,000万円

実際の計算では、土地の形や間口による補正が入ります。ここでは目安として省略しています。

納税通知書が手元にないとき

市区町村の窓口で「固定資産評価証明書」を取れば、同じ内容を確認できます。相続人であれば、亡くなった方の分も請求できます。その市区町村にある不動産を一覧できる「名寄帳(なよせちょう)」も便利です。

路線価が付いていない地域のとき

郊外や農村部では、道路に路線価が付いていないことがあります。その場合は「固定資産税評価額×地域ごとの倍率」で計算します。倍率は路線価図と同じサイトの「評価倍率表」で確認できます。地図から各種の公的な値段をまとめて見られる「全国地価マップ」というサイトも補助になります。

あなたの実家なら相続税はいくら?

ひとことで言うと──実家の評価額の合計が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」以下なら、相続税はかかりません。超えた分にだけ、段階的に税金がかかります。

評価額かんたん換算(概算)
税金計算用の評価額の目安:約4,000万円
この財産だけなら、非課税枠4,200万円の範囲内です。
※ 概算です。土地は場所や形で変わります。マンションは2024年新ルールの下限の目安で、物件により6割より高くなります。建物は通知書の評価額を、預貯金・株式は残高・時価を選んでください。
無料相談を予約する(30分・無料)

早見表でも確認できます。実家(相続税の評価額ベース)だけを、子どもだけで相続する場合の目安です。

実家の評価額の合計相続人1人相続人2人相続人3人
3,000万円0円0円0円
5,000万円約140〜180万円約70〜90万円約15〜25万円
8,000万円約580〜780万円約400〜540万円約280〜380万円
1億円約1,040〜1,400万円約650〜890万円約540〜720万円

※ 概算です(±15%程度の幅)。実家以外の財産・借金、配偶者の税額軽減などの割引は考慮していません。

ポイントは非課税枠です。相続税には基礎控除という、誰でも使える非課税枠があります。金額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。評価額の合計が基礎控除を超えなければ、相続税はかかりません。だからこそ、実家の評価額を正しく知ることが出発点になります。

計算の3ステップ

  1. ① 財産を評価額で合計する(実家のほか、預貯金や株式なども足します)
  2. ② 基礎控除を引く(残った金額にだけ税金がかかります)
  3. ③ 残りを相続人で分けたと仮定し、10〜55%の税率表で計算する

実家5,000万円・子2人の計算例

  1. ① 実家の評価額5,000万円(土地4,500万円+建物500万円)だけが財産とします
  2. ② 基礎控除は3,000万円+600万円×2人=4,200万円。5,000万円−4,200万円=800万円
  3. ③ 800万円を2人で分けて税率をかけると、相続税は2人合わせて約80万円

預貯金や保険も含めた遺産全体で試算したい方は、相続税計算シミュレーションの記事が便利です。家族構成と遺産総額を選ぶだけで、全体の目安がわかります。

評価額が高すぎるときは下げられる?

評価額が高すぎるときの対処の図解。縦覧で近隣と比較、審査の申出は3か月以内、小規模宅地の特例、行きすぎた圧縮は否認されるリスク

ひとことで言うと──固定資産税評価額には、正式な確認と不服申立ての手続きがあります。相続税の土地評価は、土地の条件しだいで下げられる余地があります。

  • 固定資産税評価額に疑問── 縦覧(4月ごろから)で近隣と比較 → 市区町村に確認 → 審査の申出(期限あり)
  • 相続税の土地評価── 形の悪い土地・道路に接しない土地・貸している土地などは減額の余地あり
  • 自宅の土地── 条件を満たせば、小規模宅地の特例で330㎡まで評価額80%減
  • 注意── 評価額を意図的に圧縮する行きすぎた対策は、否認されるリスクあり

固定資産税評価額──縦覧と審査の申出

「うちの評価額は高すぎないか」と感じたら、まず縦覧制度を使います。毎年4月ごろから、同じ市区町村内のほかの土地・家屋の評価額と見比べられる制度です。疑問が残れば、市区町村の担当課に説明を求めます。それでも納得できないときは、固定資産評価審査委員会という第三者機関に申し出ます。審査の申出は、納税通知書を受け取った翌日から3か月以内です。期限を過ぎると、その年度分は争えなくなります。

相続税の土地評価──下げられる余地のある土地

路線価×面積は、あくまで出発点です。形がいびつな土地、道路に接していない土地、広すぎる土地、人に貸している土地などは、評価額を下げる補正が認められています。また、亡くなった方の自宅の土地には小規模宅地の特例という制度があります。条件を満たせば、330㎡まで評価額の80%を減らせます。どの補正が使えるかの判断は専門的なので、該当しそうなら税理士に確認してください。

やってはいけない下げ方

一方で、評価額のルールを逆手に取った行きすぎた節税は危険です。国税庁には、著しく不適当な評価を例外的にやり直せる規定があります。行きすぎた評価額の圧縮は、税務署に否認されるリスクがあります。実際に、相続直前の借金による高額マンション購入が否認され、最高裁(令和4年4月19日判決)で納税者が敗訴した例があります。追徴は億単位でした。評価額の適正化は「正しい手続きと正しい補正の範囲で」が原則です。

評価額を下げられるかどうかは、物件ごとの個別判断です。

よくある質問

評価額について、読者からよく届く6つの質問に答えます。

Q1. 評価額と実際に売れる値段は、どちらが正しいのですか?

A. どちらも正しく、役割が違います。売値は買い手との合意で決まる市場の値段です。評価額は、税金などの計算のために国や市区町村が決めた値段です。売るときは売値、税金は評価額で考えてください。

Q2. 評価額より高く売れることはありますか?

A. あります。評価額は市場水準より低めに決められているため、人気エリアでは評価額を大きく上回る値段で売れることも珍しくありません。逆に、買い手が付きにくい物件では下回ることもあります。

Q3. 建物の評価額はどうやって決まりますか?

A. 市区町村が構造や築年数などから固定資産税評価額を決めます。相続税でも、建物はこの金額をそのまま使います。納税通知書の課税明細書で確認できます。

Q4. マンションの評価額は戸建てと違いますか?

A. 違います。2024年1月以後の相続からは、市場価格と評価額のずれが大きい分譲マンションについて、国の新しい通達に基づく補正で評価額が引き上げられる場合があります。当サイトのマンション専用の記事で詳しく解説しています。

Q5. 相続した実家を売ると、相続税のほかに税金がかかりますか?

A. 売却益には譲渡所得税がかかります。税率は、譲渡した年の1月1日時点の所有期間(亡くなった方が持っていた期間も通算)で決まります。5年超なら20.315%、5年以下なら39.63%です。

Q6. 専門家にはいつ相談すればよいですか?

A. 相続税の申告期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月です。実家の評価額の合計が基礎控除を超えそうなら、早めに税理士へ相談してください。評価額を下げる補正が使えるかどうかの判断も専門家の領域です。

出典・根拠:国税庁タックスアンサーNo.4602(土地家屋の評価)・No.4155(相続税の税率)・No.4102(相続税がかかる場合)・No.3208/No.3211(譲渡所得の税率)/相続税法22条(時価主義)/路線価は地価公示価格等を基にした価格の80%程度を目途(国税庁「令和8年分の路線価等について」)/固定資産税評価は地価公示価格水準の約7割・3年ごと評価替え(国土交通省「主な公的土地評価一覧」)/マンション評価の新ルール(法令解釈通達、課評2-74・課資2-16「居住用の区分所有財産の評価について」令和5年9月28日)/固定資産税評価額への審査の申出(各市区町村の固定資産評価審査委員会・納税通知書の交付を受けた日の翌日から3か月以内)/行きすぎた節税の否認(財産評価基本通達6項・最高裁令和4年4月19日判決 令和2(行ヒ)283号)

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