相続税評価額とは?── 同じ1億円でも現金は1億、自宅は7〜8千万

相続税評価額とは何かを一戸建てのイラストで示すアイキャッチ。「持ち方で時価の5〜10割」と書かれたオレンジの回答バッジが問いに答えている

実家や預金を相続しそうな方へ。同じ時価1億円でも、現金なら評価額は1億円のままです。自宅なら評価額は約7,000万〜8,000万円、賃貸アパートなら評価額は約5,000万〜6,000万円。この評価額(税金の計算に使う値段)は、財産の持ち方で4,000万円以上も変わります。

時価1億円をどう持っているか相続税評価額の目安この記事の読み方
現金・預金1億円(額面どおり)なぜ下がらない?
上場株式約9,000万〜1億円財産別の一覧を見る
自宅(土地と建物)約7,000万〜8,000万円計算機で3秒試算
賃貸アパート約5,000万〜6,000万円もっと下げるには

※ あくまで目安です。土地の形・場所・建物の古さで変わります。自宅の土地の割引(小規模宅地等の特例)は含めていません。

「そもそも土地の値段って何種類あるの?」という段階の方は、評価額のしくみを説明した記事から読むとスムーズです。逆に「評価額はもう分かった。税金がかかるか知りたい」方は、合計と基礎控除の比べ方へ進んでください。

この記事を読むと:

  1. 財産の種類を選ぶだけで、相続税評価額の目安と「税金がかかりそうか」が3秒でわかります(計算機
  2. なぜ現金と家で数え方が違うのか、財産別の数え方一覧でまとめて確認できます
  3. 評価額は調べて終わりではなく下げられることと、10か月の段取りがわかります

相続税評価額とは?

同じ家に時価・相続税評価額・固定資産税評価額の3つの値段があり、使う場面がそれぞれ違うことを示すパネル図
図1:同じ家に値段は3つ。相続税評価額は相続税と贈与税のためだけに使う値段

ひとことで言うと──相続税評価額は「相続税を計算するときだけに使う、財産の値段」です。実際に売れる値段とも、毎年の固定資産税に使う値段とも別ものです。

値段の名前使う場面決める人土地での目安
時価(売れる値段)売り買い市場実際の取引価格
相続税評価額相続税・贈与税国(国税庁)時価の約8割
固定資産税評価額固定資産税など市区町村時価の約7割

家や土地には、値段がひとつではありません。目的ごとに別の値段が用意されています。相続税評価額は、相続税と贈与税の計算のためだけに使う値段です。売るときの値段ではありませんし、毎年の固定資産税の通知に載っている金額とも一致しません。

なぜ売れる値段を使わないのでしょうか。土地や建物は、売ってみるまで値段が決まらないからです。相続税は亡くなった日を基準に計算しますが、その日に全員が不動産を売るわけにはいきません。そこで国が、数え方のルールをあらかじめ決めています。

売れる値段(時価)とどう違う?

土地の相続税評価額は、時価より低めに出ます。目安は時価の8割です。もとになる路線価が、国の公表する公示地価の8割を目安に定められているためです。

低めなのには理由があります。土地の値段は年の途中でも動きます。計算に使う値段が高すぎると、売るときには値下がりしていて税金を払えない家庭が出ます。あらかじめ余裕をもたせてあるのです。

固定資産税評価額とは別もの

固定資産税評価額は、市区町村が決める値段です。毎年の固定資産税や、登記のときの税金に使います。相続税評価額とは決める人も使う場面も違うため、金額は一致しません。

ただし、建物だけは例外です。建物の相続税評価額は、固定資産税評価額とまったく同じ金額です。手元の固定資産税の通知書を見れば、建物の分はその場で分かります。土地は路線価などで別に数えるため、通知書の数字をそのまま使うことはできません。

あなたの財産はいくらと数える?

ひとことで言うと──下の計算機で「持ち方」と「だいたいの時価」を選ぶだけです。相続税評価額の目安と、税金がかかる分かれ目(基礎控除)を超えそうかが同時に分かります。

相続税評価額のかんたん試算(概算)
相続税評価額の目安:1億円(額面どおり)
基礎控除4,200万円を超えます(申告が必要になる見込み)
※ 概算です。この財産だけを持っている場合の目安で、ほかに預金などがあれば合計して比べます。自宅の土地の割引(小規模宅地等の特例)は含めていません。使えるとさらに大きく下がります。
無料相談を予約する(30分・無料)
持ち方3,000万円5,000万円1億円2億円
現金・預金3,000万円5,000万円1億円2億円
上場株式2,700万〜3,000万円4,500万〜5,000万円9,000万〜1億円1.8億〜2億円
自宅2,100万〜2,400万円3,500万〜4,000万円7,000万〜8,000万円1.4億〜1.6億円
賃貸アパート1,500万〜1,800万円2,500万〜3,000万円5,000万〜6,000万円1億〜1.2億円

※ 表の見出しは「だいたいの時価」です。いずれも典型的なケースの概算で、実際は土地の形・場所・建物の古さ・空室の有無で上下します。正確な金額は税理士による個別の試算が必要です。

表を横に見てください。同じ金額を持っていても、現金だけは1割も下がりません。持ち方を変えるだけで、税金の計算に使う値段は数千万円も動きます。この差がどこから来るのかを、次のセクションで説明します。

「うちの土地は結局いくらと数える?」

土地は形・間口・道路との接し方で評価額が変わります。相続専門の税理士が30分無料で試算のご相談に応じます。

なぜ現金と家で数え方が違うの?

同じ時価1億円でも相続税評価額は現金1億円、上場株式9千万〜1億円、自宅7〜8千万円、賃貸5〜6千万円と下がっていく棒の対比図
図2:同じ時価1億円でも、現金だけは1億円のまま。株式・自宅・賃貸の順に下がる

ひとことで言うと──現金は誰にとっても額面どおりの価値ですが、土地や建物はすぐに現金に換えられず、値段も1つに決まらないからです。そこで財産の種類ごとに、数え方のルールが決められています。

財産の種類数え方時価に対する目安
現金・預金額面どおり10割
上場株式4つの値段の最も安いもの9〜10割
建物(家屋)固定資産税評価額と同じ建築費の5〜6割が目安
土地路線価方式か倍率方式8割が目安
貸している土地・建物借り手の権利分を引く5〜7割
マンション2024年から新ルール物件により変動
死亡保険金500万円×相続人の数まで0
ゴルフ会員権取引価格をもとに決める
家具・家電など中古で売れる値段
非上場株式会社の規模と中身で決まる専門家の領域

現金は1円も下がらない

現金と預金は、額面がそのまま相続税評価額です。100万円の預金は、誰が見ても100万円の価値があります。売る手間もかかりませんし、値段が人によって変わることもありません。だから割り引く理由がないのです。

財産の中で、現金だけは1円も下がりません。これが相続税評価額という仕組みの性格を、いちばんよく表しています。裏を返せば、同じ金額でも不動産で持っている家庭のほうが、税金の計算上は有利になります。不動産が「相続対策になる」と言われるのは、この差が理由です。

ただし、有利さだけで判断するのは危険です。相続税は現金で納めるのが原則です。評価額が下がっても、納税資金が用意できなければ困ります。

土地には数え方が2つある

土地の数え方は2種類です。どちらを使うかは、土地の場所で決まります。自分で選べるわけではありません。

  1. 路線価方式:土地が面している道路の値段(路線価)に、土地の形に応じた補正をかけ、面積をかけて計算します。市街地はこちらです。
  2. 倍率方式:路線価が決められていない地域で使います。固定資産税評価額に、地域ごとに決まった倍率をかけて計算します。

路線価も倍率も、国税庁のサイトで誰でも無料で調べられます。まず自分の土地の住所で路線価があるかを確認し、なければ倍率方式になる、という順番です。

建物は通知書の数字がそのまま使える

建物は、いちばん簡単です。固定資産税の通知書に載っている評価額が、そのまま相続税評価額になります。計算も調べ直しも不要です。

この固定資産税評価額は、建てたときの工事費の5〜6割ほどに収まることが多く、古くなるほど下がっていきます。築30年の木造住宅なら、評価額がかなり小さくなっていることも珍しくありません。

上場株式は4つの値段から選べる

上場株式には、少し変わったルールがあります。次の4つの値段を比べて、いちばん安いものを使ってよいことになっています。

  1. 亡くなった日の終値
  2. 亡くなった月の終値の平均
  3. その前の月の終値の平均
  4. さらに前の月の終値の平均

たまたま株価が高い日に相続が起きた家庭が損をしないための仕組みです。とはいえ下がり幅は大きくありません。株式は時価に近い金額で数えると考えてください。

同じ土地でも評価額は下げられる

同じ土地でも自分で住むならそのまま、人に貸すと下がり、自宅の特例なら8割引きになると段階的に評価額が下がる対比図
図3:同じ土地でも、自分で住む→人に貸す→自宅の特例の順に評価額が下がる

ひとことで言うと──同じ土地でも「使い方」で評価額が変わります。自分で住むより人に貸すほうが低くなり、さらに自宅の土地には8割引きの特例があります。

土地の使い方評価額の目安
自分で住んでいるそのまま(基準)
人に貸している土地借り手の権利分だけ下がる
アパートを建てて貸す土地も建物も下がる
自宅で特例が使える330㎡まで8割引き

評価額は調べて終わりではなく、使い方しだいで下がります。相続税評価額は「自由に売り買いできる度合い」を映すからです。制約が多い土地ほど低く数えます。

人に貸すと下がる理由

人に貸している土地や建物は、持ち主の自由になりません。借りている人がいれば、明日から売って引き渡すわけにいかないからです。その分を差し引いて数えます。

アパートを建てて貸している土地は、土地と建物の両方で差し引きが効きます。だから賃貸アパートは時価の5〜6割まで下がるのです。ただし空室が多いと差し引ける分は減ります。

いちばん大きいのは自宅の土地の8割引き

最も効くのは、自宅の土地が330㎡まで80%引きになる特例です。時価5,000万円の実家の土地なら、評価額4,000万円が800万円まで下がる計算になります。ほかのどの方法より効果が大きく、この特例だけで税金が0円になる家庭も多くあります。

ただし、誰が相続するかなどの条件があります。配偶者が相続する場合はほぼ問題ありませんが、別居している子どもが相続する場合は要件が細かくなります。使えるかどうかの判定は、小規模宅地の特例のしくみを説明した記事で確認してください。なお、この特例を使うには、税額が0円になる場合でも申告が必要です。

広い土地・使いにくい土地はさらに下がる

ほかにも下がる要素があります。三大都市圏で500㎡以上といった広い宅地は、分割の手間を見込んで下がります。間口が狭い土地、がけ地、騒音がひどい土地なども条件しだいで下がります。こうした補正は種類が多く、見落とすと払いすぎになります。土地の評価は、専門家に見てもらう価値がいちばん大きい部分です。

合計が基礎控除以下なら税金は0円

財産を種類ごとに数え、保険金を足し、借金と葬儀費用を引いて基礎控除と比べる4ステップと、割引で0円にした場合は申告が必要という注意を示すフロー図
図4:種類ごとに数える→保険金を足す→借金・葬儀費用を引く→基礎控除と比べる

ひとことで言うと──評価額を出す目的は、全部を合計して「基礎控除」と比べるためです。合計が基礎控除以下なら相続税は0円で、申告もいりません。

法定相続人の人数基礎控除(税金がかからない枠)
1人3,600万円
2人4,200万円
3人4,800万円
4人5,400万円

基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で決まります。合計が基礎控除以下なら、相続税は0円で申告もいりません。評価額を1円単位まで詰める必要があるのは、この線を超えそうな家庭だけです。

合計するときは借金と葬儀費用を引く

合計の出し方は、次の順番です。

  1. 財産をすべて種類ごとに数える(土地・建物・預金・株式など)
  2. 死亡保険金を足す(500万円×法定相続人の数までは0として扱う)
  3. 借金・未払いの医療費・葬儀費用を引く
  4. 残った金額を基礎控除と比べる

借金や葬儀費用を引ける点は見落とされがちです。住宅ローンが残っていれば、その分だけ合計は下がります。

0円でも申告が必要な場合がある

ここが最も間違えやすいところです。同じ0円でも、申告がいる場合といらない場合があります。

  • 申告いらない:何もしなくても合計が基礎控除以下だった場合
  • 申告が必要:小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を使った結果、0円になった場合

割引を使って0円にしたときは、0円でも申告が必要です。申告しなければ割引そのものが使えず、あとから税金を請求されることになります。評価額を下げる特例を当てにするなら、申告はセットだと考えてください。

誰がいつ数える?10か月の段取り

ひとことで言うと──数えるのは相続人自身か、依頼された税理士です。税務署は計算してくれません。期限は相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。

  1. 1〜3か月:財産を探し出す。通帳・固定資産税の通知書・証券会社の書類を集めます。
  2. 3〜5か月:種類ごとに数える。預金と建物はすぐ分かります。土地は路線価を調べます。
  3. 5〜8か月:合計して基礎控除と比べる。超えそうなら誰が何をもらうかを話し合います。
  4. 10か月まで:申告して納税する。割引を使って0円になる場合も申告します。

預金や上場株式は自分でも十分に数えられます。むずかしいのは土地です。土地の評価額は形や条件で下がる余地があり、見落とすと払いすぎになります。合計が基礎控除を超えそうなら、早めに専門家へ相談するのが安全です。

評価額の合計が出たら、次は税額の計算です。家族構成を選ぶだけで目安が出せる相続税の計算シミュレーションの記事で、実際の税額を確かめてください。

間違えたらどうなる?

少なく申告していれば、あとから不足分に加えて追加の税金がかかります。逆に払いすぎた場合は、原則として申告期限から5年以内なら返してもらう手続きが取れます。土地の評価は払いすぎが起きやすい部分です。

よくある質問

ひとことで言うと──評価額でつまずきやすい6つの質問に答えます。時価との違い、固定資産税評価額との関係、下げ方の可否がまとまっています。

Q1. 相続税評価額と時価(売れる値段)は何が違いますか?

A. 使う場面が違います。時価は売り買いの値段で、市場が決めます。相続税評価額は相続税と贈与税の計算にだけ使う値段で、国のルールで数えます。土地なら時価の8割が目安です。

Q2. 相続税評価額と固定資産税評価額は同じものですか?

A. 別ものです。固定資産税評価額は市区町村が決め、毎年の固定資産税などに使います。ただし建物だけは例外で、相続税評価額は固定資産税評価額と同じ金額です。土地は路線価などで別に数えるため一致しません。

Q3. 評価額は自分で調べられますか?

A. 預金は残高、建物は固定資産税の通知書、上場株式は終値で確認できます。路線価も国税庁のサイトで無料で見られます。ただし土地は形や道路との接し方で補正がかかるため、正確な金額は専門家の計算が必要です。

Q4. 現金を不動産に換えると相続税は安くなりますか?

A. 評価額は下がる方向に働きます。現金は額面どおりですが、不動産なら7〜8割、貸せば5〜6割が目安だからです。ただし相続税は現金で納めるのが原則で、不動産ばかりでは納税資金が足りなくなります。明らかな税逃れと判断されると否認されることもあります。

Q5. マンションの評価額はどう数えますか?

A. 2024年1月以後の相続から、マンション専用の新しいルールが使われています。売れる値段と評価額の開きが大きい物件ほど引き上げられる仕組みで、タワーマンションの高層階が主な対象です。一戸建てとは数え方が異なります。

Q6. 相続した実家を売ったら、別の税金がかかりますか?

A. 売った利益には、相続税とは別に譲渡所得税がかかります。持っていた期間(亡くなった方の期間も通算)が5年を超えていれば税率20.315%、5年以下なら39.63%です。相続から3年10か月以内に売ると税金が安くなる制度もあります。

まとめ

ひとことで言うと──相続税評価額は財産の種類ごとに数え方が違い、現金だけが1円も下がりません。合計して基礎控除と比べるのが目的です。

3点要約

  1. 何の値段?:相続税の計算にだけ使う値段です。売れる値段とも、固定資産税の値段とも別もの。ただし建物だけは固定資産税評価額と同じです。
  2. いくらと数える?:同じ時価1億円でも、現金は1億円、上場株式は約9,000万〜1億円、自宅は約7,000万〜8,000万円、賃貸アパートは約5,000万〜6,000万円。現金だけが下がりません。
  3. 何をする?:全部を合計して基礎控除(3,000万円+600万円×相続人の数)と比べます。以下なら0円で申告も不要。割引を使って0円にしたときは申告が必要です。期限は10か月。

出典・根拠:国税庁タックスアンサー No.4602(土地家屋の評価。家屋は固定資産税評価額に1.0を乗じた金額=固定資産税評価額と同じ)/No.4632(上場株式の評価)/No.4614(貸家建付地の評価)/No.4124(小規模宅地等の特例)・租税特別措置法69条の4/No.4152(相続税の計算・基礎控除)/No.4155(相続税の税率)/No.4114(死亡保険金の非課税枠)/No.4205(申告と納税・期限10か月)/No.3267(取得費加算の特例)/財産評価基本通達/相続税法22条(評価の原則・時価)・15条(遺産に係る基礎控除)/国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」/マンション評価の新ルール(国税庁・令和5年9月28日 法令解釈通達 課評2-74・課資2-16)。路線価が公示地価の8割を目安とする点、土地の固定資産税評価額が公示地価の7割を目安とする点、および建物の固定資産税評価額が建築費の5〜6割程度に収まる点は、いずれも評価実務上の水準であり、法令が比率を定めるものではありません。

関連記事

相続専門税理士の無料相談

「うちの土地は結局いくらと数えるのか」「基礎控除を超えそうか」の見極めから、使える割引の判定まで。相続専門の税理士が30分無料でご相談に応じます。

類似投稿