固定資産税評価額とは?── 家の相続税評価額はこの額、土地は路線価

固定資産税評価額は、相続税の計算にそのまま使えるとは限りません。家(建物)の相続税評価額は、この額と同じです。しかし土地の相続税評価額は路線価で計算し直すため、目安で1割ほど高くなります。固定資産税評価額が3,000万円の実家なら、相続税評価額の目安は約2,780万〜3,780万円です。
| あなたが相続するもの | 相続税評価額の目安 | この記事の読み方 |
|---|---|---|
| 実家(土地+建物) | 約2,780万〜3,780万円 | 家と土地の違い |
| 土地だけ | 約2,910万〜3,950万円 | 家と土地の違い |
| 分譲マンション | 約2,650万〜3,600万円 | いくらになる |
| 人に貸している家 | 約2,170万〜2,950万円 | いくらになる |
※ 固定資産税評価額の合計が3,000万円・市街地(路線価がある地域)の場合の概算です。土地と建物の内訳や地域によって変わります。
相続よりも先に、不動産の値段の全体像から知りたい方は評価額とは何かをまとめた記事をご覧ください。納税通知書が手元にない方は、どこで調べるへお進みください。
この記事を読むと:
- 家と土地で相続税での扱いがどう違うかがわかります
- 自分の実家なら相続税評価額がいくらになるかを計算機で試算できます
- きょうだいで分けるときの基準にしてよいかを判断できます
固定資産税評価額とは何の値段?

ひとことで言うと──固定資産税評価額は、市町村が決めた「税金を計算するための不動産の値段」です。売買価格そのものではなく、土地なら国が示す標準的な値段の7割ほどが目安になります。
| 値段の名前 | 決めるところ | 水準の目安 |
|---|---|---|
| 実勢価格(売買価格) | 売り手と買い手 | 100% |
| 公示地価 | 国 | 実勢価格に近い |
| 相続税評価額(路線価) | 国税庁 | 公示地価の約80% |
| 固定資産税評価額 | 市町村 | 公示地価の約70% |
決めているのは市町村
固定資産税評価額を決めるのは、その不動産がある市町村です(東京23区は都)。国が定めた評価の基準にしたがって、市町村長が価格を決め、台帳に登録します。売るための値段ではなく、税金を計算するための値段です。
土地は、国が毎年公表する標準的な値段(公示地価)の7割程度が目安です。家(建物)にこの目安はなく、建てるのにかかる費用をもとに計算されます。新築なら建築費の5〜6割程度になることが多く、その後は年数がたつごとに下がっていきます。
課税明細書の「価格」欄を見る
いちばん手軽な確認方法は、毎年届く固定資産税の納税通知書です。これに同封されている課税明細書に、物件ごとの金額が並んでいます。見るのは「価格」または「評価額」と書かれた欄です。
すぐ隣に「課税標準額」という欄もありますが、これは別物です。住宅が建つ土地は課税標準額が6分の1に下がる特例があるため、価格よりかなり低く表示されます。相続の計算に使うのは「価格」のほうです。
相続税にそのまま使えるのは家だけ

ひとことで言うと──家(建物)の相続税評価額は、固定資産税評価額と同じ額です。しかし土地は路線価という別の値段で計算し直すため、そのままでは使えません。
| 相続するもの | 相続税評価額の出し方 | この額は |
|---|---|---|
| 家(建物) | 固定資産税評価額と同じ | そのまま使う |
| 土地(市街地) | 路線価で計算し直す | 使わない |
| 土地(路線価なし) | 評価額×地域ごとの倍率 | 倍率をかける |
| 分譲マンション | 2024年から新しい計算 | 下のH3で解説 |
家は、そのまま使うのが原則
家(建物)の相続税評価額は、固定資産税評価額と同じ額です。何倍かする必要も、計算し直す必要もありません。納税通知書に書かれた家屋の価格が、そのまま相続税の計算に使われます。
土地は「路線価」で計算し直す
一方、市街地の土地はそうはいきません。土地の相続税評価額は、国税庁が道路ごとに定める「路線価」を使って計算します。路線価に土地の面積をかけ、形や間口に応じて補正して求めます。固定資産税評価額とは別の数字なので、置き換えることはできません。
路線価は国税庁のホームページで誰でも調べられます。相続税評価額そのものの考え方は、相続税評価額の記事でくわしく説明しています。
路線価がない地域は、倍率をかける
郊外や農村部には、路線価が定められていない地域があります。その場合は「倍率方式」を使います。固定資産税評価額に、国税庁が地域ごとに公表している倍率をかけるだけです。宅地の倍率は1.1前後の地域が多いのですが、地域によって違うため、必ず倍率表で確認します。
なぜ1割ほどの差が出るのか
理由は、決める役所と目安の水準が違うからです。土地の固定資産税評価額は公示地価の7割程度、路線価は8割程度をめどに設定されています。8割を7割で割ると、およそ1.14倍。つまり同じ土地でも、相続税評価額は固定資産税評価額より1割ほど高くなるのが目安です。決められた換算率ではありません。
あなたの実家はいくらになる?
ひとことで言うと──固定資産税評価額が3,000万円の実家なら、相続税評価額の目安は約2,780万〜3,780万円です。同じ額で計算する相続登記の登録免許税は、12万円と決まります。
自分の実家の相続税評価額を、正確に知りたい方へ
土地の評価は、形・間口・接する道路の数で大きく変わります。相続に強い専門家が、実際の評価額の算出から申告までを整理します。
計算のしくみは「土地は1.14倍、建物はそのまま」
この計算機は、次の順番で目安を出しています。実家の場合は、固定資産税評価額の内訳を土地65%・建物35%と仮定しています。
- 固定資産税評価額を土地の分と建物の分に分ける
- 土地の分に約1.14倍をかける(路線価がない地域は1.1倍)
- 建物の分はそのままにする
- 両方を足し、前後15%の幅を持たせる
土地は1.14倍、建物はそのまま。これがこの記事のいちばん大事な結論です。実際の土地は形や道路との関係で評価が動くため、幅のある目安として使ってください。
人に貸している家は、評価額が下がる
相続する家を人に貸している場合、評価額は下がります。借りている人にも権利があるとみなされるためです。建物は3割引きの0.7倍、その敷地も約0.82倍まで下がります。
分譲マンションは2024年から計算が変わった
分譲マンションだけは事情が違います。2024年1月1日以後の相続からは、市場価格との差を埋める補正が加わりました。高層階や築浅の物件では、評価額が以前より上がる場合があります。くわしくはマンションの相続税評価額の記事をご覧ください。この計算機の数値は、補正が入る前の目安です。
相続の手続きでどこに使う?

ひとことで言うと──この1つの数字が、5つの税金の計算の基礎になります。相続でとくに効いてくるのは、相続登記の登録免許税と、家の相続税評価額の2つです。
| 税金 | 計算のしかた | 相続との関係 |
|---|---|---|
| 固定資産税 | 課税標準額×1.4% | 毎年かかる |
| 都市計画税 | 課税標準額×0.3%以内 | 市街化区域だけ |
| 登録免許税 | 評価額×0.4% | 相続登記で必ず |
| 不動産取得税 | 評価額×3〜4% | 相続なら非課税 |
| 相続税 | 家の評価額はこの額 | 土地は路線価 |
相続登記の登録免許税は0.4%
相続で不動産の名義を変えるときにかかるのが、登録免許税です。税率は固定資産税評価額の0.4%と決まっています。土地と建物の評価額を合計し、1,000円未満を切り捨ててから計算します。評価額3,000万円の実家なら12万円です。
相続登記は2024年から義務になった
名義変更を後回しにしてきた家庭も多いはずですが、扱いが変わりました。相続で不動産を取得したと知った日から3年以内に、登記を申請する義務があります。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象になります。2024年4月より前に起きた相続も対象です。
不動産取得税は、相続ならかからない
不動産を手に入れたときにかかる不動産取得税は、固定資産税評価額をもとに計算されます。ただし相続で取得した不動産には、不動産取得税がかかりません。一方、生前贈与で受け取った場合は課税されます。同じ実家をもらうのでも、相続か贈与かで扱いが変わります。
毎年の固定資産税は「課税標準額」で計算する
相続したあと、毎年払うのが固定資産税です。税率は1.4%が標準ですが、かける相手は評価額ではなく課税標準額です。住宅が建つ土地は、200平方メートルまでの課税標準額が6分の1になります。空き家を取り壊して更地にすると、この特例が外れて負担が増えます。
きょうだいで分けるとき基準にしていい?

ひとことで言うと──全員が納得すれば、固定資産税評価額を基準にしてもかまいません。ただしこの額は4つの値段のなかで最も低くなりやすく、家をもらう人に有利、現金をもらう人に不利に働きます。
| 分けるときに使う値段 | 家をもらう人 | 現金をもらう人 |
|---|---|---|
| 実勢価格(売れる値段) | 不利 | 有利 |
| 相続税評価額 | やや有利 | やや不利 |
| 固定資産税評価額 | 有利 | 不利 |
| 不動産鑑定の価格 | 中立 | 中立 |
どの値段を使うかに、法律の決まりはない
遺産を分けるときに不動産をどの値段で見るかは、法律で決まっていません。相続人全員が合意すれば、どの値段を使ってもかまいません。「手元の納税通知書に書いてあるから」という理由で固定資産税評価額が選ばれることは、実際によくあります。
なぜ家をもらう人に有利になるのか
低い値段で評価すれば、家をもらう人の取り分が少なく見えるからです。売れば4,000万円の実家と、現金3,000万円を、きょうだい2人で分ける場合を考えてみます。
- 固定資産税評価額2,800万円で計算すると、遺産は合計5,800万円
- 1人あたり2,900万円なので、兄は実家+現金100万円、弟は現金2,900万円
- しかし兄が実際に手にした価値は、実家4,000万円+100万円=4,100万円
- 売れる値段4,000万円で計算していれば、弟の取り分は3,500万円だった
低い評価額で分けると、家をもらう人が数百万円分得をすることになります。この例では600万円の差です。あとから相場を知って不公平感が生まれる原因は、たいていここにあります。
話し合いがつかないときは、分けるときの時価
合意できず家庭裁判所で決める場合、原則として使われるのは分けるときの時価です。固定資産税評価額でも相続税評価額でもありません。それでも折り合わなければ、不動産鑑定士に評価してもらいます。手軽さで選ぶ前に、全員が相場を知ったうえで納得しているかを確かめてください。
実家の分け方で、もめたくない方へ
どの値段を基準にするかで、取り分は数百万円変わります。相続に強い専門家が、実勢価格と評価額の両方を示し、納得できる分け方を整理します。
どこで調べる?高すぎたらどうする?
ひとことで言うと──調べる方法は3つあります。毎年届く課税明細書、市区町村で取る評価証明書、そして所有する不動産を一覧できる名寄帳です。
| 調べ方 | 手に入る場所 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 課税明細書 | 毎年届く納税通知書 | 手元にあるとき |
| 固定資産評価証明書 | 市区町村の窓口 | 相続登記に使う |
| 名寄帳 | 市区町村の窓口 | 物件を探すとき |
まずは課税明細書の「価格」欄
固定資産税の納税通知書は、毎年4月から6月ごろ、その年の1月1日時点の所有者あてに届きます。同封の課税明細書に、物件ごとの価格が載っています。亡くなった親あての封書が家に残っていれば、そこで確認できます。
相続人なら、評価証明書を取れる
通知書が見つからないときは、不動産がある市区町村の窓口で固定資産評価証明書を取ります。相続人であることを戸籍などで示せば請求できます。相続登記でも使う書類です。
名寄帳で、取りこぼしを防ぐ
「親がどこに何を持っていたか分からない」という相談は少なくありません。そのときに役立つのが名寄帳です。同じ市町村内で所有している不動産を、一覧で確認できます。
とくに気をつけたいのが、評価額の低い土地です。同じ市町村内の土地の課税標準額の合計が30万円未満なら、固定資産税はかかりません。家屋は20万円未満が同じ扱いです。税金がかからない分、納税通知書に載らないことがあります。私道や小さな山林がこれにあたります。
3年に1度、値段は見直される
固定資産税評価額は、3年に1度の評価替えで見直されます。直近の見直しは2024年度で、次は2027年度です。家は年数がたつごとに下がっていきます。相続では、亡くなった年度の価格を使います。
高すぎると感じたら、3か月以内に申し出る
評価額が高すぎると感じたときは、まず4月からの縦覧期間に、近隣の土地や家屋の価格と見比べてみてください。それでも納得できない場合は、市町村の固定資産評価審査委員会に審査の申出ができます。期限は納税通知書を受け取った日の翌日から3か月以内です。この期限を過ぎると、その年度の価格は争えなくなります。
よくある質問
ひとことで言うと──読者からよく寄せられる6つの疑問に、短くお答えします。迷いやすい「相続税評価額との違い」と「価格と課税標準額の違い」から確認してください。
固定資産税評価額と相続税評価額は何が違いますか?
決める役所と目的が違います。固定資産税評価額は市町村が決め、土地なら公示地価の7割ほどが目安です。相続税評価額は国税庁が決め、土地は8割ほどが目安になります。家については同じ額です。
課税明細書の「価格」と「課税標準額」は、どちらを見ますか?
相続で使うのは「価格」の欄です。こちらが固定資産税評価額にあたります。「課税標準額」は毎年の固定資産税を計算するための金額で、価格より低くなっています。
固定資産税評価額は何年ごとに変わりますか?
3年に1度の評価替えで見直されます。直近は2024年度で、次は2027年度です。相続では、亡くなった年度の価格を使います。
相続登記の登録免許税はいくらかかりますか?
固定資産税評価額の0.4%です。評価額3,000万円の実家なら12万円になります。土地と建物を合計してから、1,000円未満を切り捨てて計算します。
相続で不動産をもらうと、不動産取得税はかかりますか?
かかりません。相続による取得は非課税と決められているためです。ただし生前贈与で受け取った場合は課税されます。
遺産分割は固定資産税評価額で決めてもいいですか?
相続人全員が納得すれば、その額で決めてかまいません。どの値段を使うかに法律の決まりはないからです。ただし家をもらう人に有利、現金をもらう人に不利に働きます。
この記事のまとめ
- 家の相続税評価額は、固定資産税評価額と同じ:計算し直す必要はありません
- 土地は路線価で計算し直す:目安で1割ほど高くなり、そのままでは使えません
- 相続登記の登録免許税は0.4%:3,000万円の実家なら12万円。申請は3年以内が義務です
- 遺産分割の基準にすると家をもらう人が有利:全員が相場を知ったうえで決めてください
出典・根拠:地方税法第403条(市町村長が固定資産評価基準により価格を決定し課税台帳に登録)/第350条(固定資産税の標準税率1.4%)/第349条の3の2(住宅用地の課税標準は200平方メートル以下が6分の1、超える部分が3分の1)/第351条(免税点=土地30万円・家屋20万円)/第341条第6号・第409条(3年に1度の評価替え。直近は令和6年度、次は令和9年度)/第416条(縦覧)/第432条第1項(審査の申出=納税通知書の交付を受けた日後3か月以内)/第73条の7第1号(相続による取得は不動産取得税が非課税。贈与は課税)/第702条の4(都市計画税0.3%以内)。財産評価基本通達89(家屋=固定資産税評価額×倍率1.0)/11・13(路線価方式)/21-2(倍率方式)/93(貸家)/26(貸家建付地。借家権割合は全国一律30%)。登録免許税法第10条・別表第一(相続による所有権移転は1000分の4)・第15条・第19条(1,000円未満・100円未満切捨て)。不動産登記法第76条の2・第164条第1項(相続登記は取得を知った日から3年以内。令和6年4月1日施行で施行前の相続にも適用。怠ると10万円以下の過料)。国税庁タックスアンサーNo.4602・No.4614、路線価図・評価倍率表(路線価は地価公示価格の80%が目安)。総務省「固定資産税」(土地は地価公示価格等の7割を目途、家屋は再建築価格と経年減点補正)。民法第906条・第907条(不動産の評価方法に法律上の定めはない)。居住用の区分所有財産の評価について(令和5年国税庁法令解釈通達。令和6年1月1日以後の取得に区分所有補正率)。新築家屋の建築費比5〜6割、倍率地域の宅地倍率1.1前後、土地と建物の内訳割合は、いずれも法定ではない実務上の目安です。計算機と早見表の数値はすべて概算で、実際の評価額は土地の形状・接道・地域によって変わります。正確な金額は専門家または管轄の税務署・市区町村にご確認ください。
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