タワマン節税は2024年改正で終わった?── 相続税評価額が実勢価格の6割に

「タワマンを買えば相続税が減る」と聞いて、2024年の改正でどうなったか気になっている方へ。結論から言うと、効果はなくなっていません。ただし大きく縮みました。改正前は評価額が時価の3割ほどまで下がることもありましたが、いまは時価の約6割で下げ止まります。効果はおよそ半分になった、というのが実際のところです。
| 時価1億円のタワマン(高層階) | 相続税評価額の目安 |
|---|---|
| 2023年まで(改正前) | 約2,500万〜3,200万円 |
| 2024年1月から(改正後) | 約6,000万円(時価の約6割) |
| 参考:現金で持つ場合 | 1億円(1円も下がらない) |
※ あくまで目安です。評価額は物件の階数・築年数・土地の持ち分で変わります。小規模宅地等の特例(土地の割引)は含めていません。
マンションの評価額の数え方を一から知りたい方は、マンション相続税評価額のしくみの記事が入口です。「うちのタワマンはいくら上がる?」という方は、増税額を出す計算機へ進んでください。
この記事を読むと:
- タイプと時価を選ぶだけで、改正後の評価額と相続税がいくら増えるかが3秒でわかります
- 2024年の改正で何がどう変わったのか、なぜ変わったのかが式なしで理解できます
- それでも残るメリットと、否認されるNG行為、これからの選択肢がわかります
タワマン節税とは?

ひとことで言うと──タワマン節税は「売れる値段(時価)と、税金の計算に使う値段(相続税評価額)の差」を利用するしくみです。現金をタワマンに換えると、財産の価値は同じでも、税金の計算上の金額だけが小さくなります。
| 持ち方 | 税金の計算に使う値段 |
|---|---|
| 現金・預金 1億円 | 1億円(額面どおり) |
| タワマン高層階(時価1億円) | 改正前は2,500万〜3,200万円も |
相続税は、財産を「相続税評価額」という値段に置きかえて計算します。現金や預金は額面どおりで、1円も下がりません。ところがマンションは、建物と土地を国のルールで数えるため、実際に売れる値段より低く出ます。とくにタワーマンションの高層階は、この差が大きくなります。
なぜ高層階で差が大きいのでしょうか。高層階は眺めのよさで分譲価格が高くなります。しかし相続税の評価額は、もともと階数をあまり反映しない計算でした。だから「値段は高いのに、税金の計算では安い」という開きが生まれます。
現金をタワマンに換えると課税価格が下がる
ここに節税の余地がありました。1億円の現金を持っていれば、そのまま1億円が税金の対象です。同じ1億円でタワマンの高層階を買うと、税金の計算に使う値段は2,500万〜3,200万円ほどまで下がることもありました。持ち方を換えるだけで、課税の対象が数千万円も小さくなったのです。これがタワマン節税と呼ばれてきたしくみです。
賃貸に出せば、さらに下がります。人に貸している建物や土地は持ち主の自由になりにくいため、その分を差し引いて数えるからです。こうして評価額を圧縮するのが、これまでの典型的なやり方でした。
2024年の改正で何が変わった?

ひとことで言うと──2024年1月から、マンションの評価額に「時価の約6割」という下限が入りました。時価と評価額の開きが大きい物件ほど、評価額が引き上げられます。タワマンの高層階が主な対象です。
| 項目 | 改正前 | 2024年1月から |
|---|---|---|
| 評価額の下限 | なし | 時価の約6割 |
| 高層階の評価額 | 時価の3割ほども | 時価の約6割まで戻る |
| 影響が大きい物件 | ― | 高層・築浅のタワマン |
| 影響が小さい物件 | ― | 低層・築古・郊外 |
改正の名前は「居住用の区分所有財産の評価」という新しいルールです。マンション1戸ごとに、時価と評価額がどれだけ開いているかを計算します。開きが大きすぎる物件は、評価額を「時価のおおむね6割」まで引き上げます。開きが小さい物件は、これまでどおりで変わりません。
具体的には、築年数・階数・部屋の広さに対する土地の持ち分などから、開き具合を1戸ごとに出します。むずかしい式ですが、読者が覚える必要はありません。大事なのは「評価額が時価の6割を下回っていたら、6割まで戻される」という点だけです。改正前に時価の3割だった高層階は、6割へと約2倍に上がる計算になります。
なぜ国はルールを変えたのか
行きすぎた差が問題になったからです。国税庁の調査で、マンションの相続税評価額は市場価格の平均で4割ほどと分かりました。一戸建てよりも開きが大きかったのです。同じ財産でも、現金や一戸建てで持つ人より、タワマンで持つ人が大きく得をします。持ち方だけで税金が大きく変わるのは公平でない、という理由で見直されました。
もう一つ、後で説明する最高裁の判決も背景にあります。極端な対策が裁判で否認され、「どこまでが許されるのか」の線引きがはっきりしないままでした。そこで、計算のルールそのものに下限を設けて、開きすぎを自動的に抑えるようにしたのです。
あなたのタワマンはいくら評価額が上がる?
ひとことで言うと──下の計算機で「タイプ」「だいたいの時価」「築年数」を選ぶだけです。改正後の評価額の目安と、改正前と比べて相続税がいくら増えるかが分かります。
| タイプ | 改正前の評価額 | 改正後の評価額 |
|---|---|---|
| タワマン高層階 | 2,521万〜3,209万円 | 5,280万〜6,720万円 |
| 都心の中層 | 3,341万〜4,252万円 | 5,280万〜6,720万円 |
| 低層(3階建て) | 4,701万〜5,983万円 | 5,280万〜6,720万円 |
| 郊外 | 4,481万〜5,703万円 | 5,280万〜6,720万円 |
※ 築6〜15年・時価1億円の概算(上の計算機と同じ算式)。改正後はどのタイプも時価の約6割(5,280万〜6,720万円)でそろい、改正前に低かったタワマン高層階ほど上がり幅が大きくなります。
表を見てください。改正後の評価額はどのタイプも「時価の約6割」でそろいます。差がつくのは、改正前にどれだけ低かったかです。もともと大きく下がっていたタワマン高層階は、約3,000万円から約6,000万円へと2倍近くに上がります。逆に、開きが小さかった低層や郊外は、もとから6割に近いため、上がり方が小さくなります。相続税の増える額は、上の計算機で人数を選ぶと出せます。
「うちのタワマンは、実際いくら増える?」
評価額は所在階や土地の持ち分で1戸ごとに変わります。否認されない持ち方も含め、相続専門の税理士が30分無料で試算のご相談に応じます。
それでも現金で持つより評価額は下がる

ひとことで言うと──改正後もマンションの評価額は「時価の約6割」で、現金(時価の10割)より低いままです。さらに土地の割引(小規模宅地等の特例)が使えれば、もっと下がります。効果は縮んでも消えていません。
| 同じ時価1億円を | 相続税評価額の目安 |
|---|---|
| 現金・預金で持つ | 1億円(下がらない) |
| 改正後のタワマンで持つ | 約6,000万円 |
| さらに自宅の特例が使える | もっと下がる |
現金なら1億円のところ、改正後のタワマンなら約6,000万円です。4,000万円ぶんは、いまも税金の対象から外れます。改正でなくなったのは「時価の3割まで下げる」ような極端な部分で、現金より下がるという基本の効果は残っています。
タワマンでも小規模宅地等の特例が使える
もう一段の割引があります。マンションにも土地の持ち分があり、そこに小規模宅地等の特例が使えます。被相続人の自宅なら、土地の持ち分が330㎡まで80%引きになります。人に貸していれば、200㎡まで50%引きです。改正後の評価額に、この割引がさらに重なります。
ただし、誰が相続するかなどの要件があります。配偶者が相続する場合はほぼ問題ありませんが、別居の子どもが相続する場合は条件が細かくなります。使えるかどうかは、小規模宅地の特例のしくみを説明した記事で確認してください。なお、この特例を使うには、税額が0円になる場合でも申告が必要です。
下がることと、得になることは別
評価額が下がっても、それだけで得とは限りません。相続税は現金で納めるのが原則です。財産がタワマンに偏っていると、納税のお金が足りなくなります。賃貸に出す場合は、空室や値下がりのリスクもあります。評価額の下がり幅だけでなく、納税資金と売りやすさまで見て判断する必要があります。
行きすぎた対策は今も否認される

ひとことで言うと──評価額が低いだけでは問題になりません。危ないのは、亡くなる直前の購入・多額の借入・相続後すぐの売却がそろった、あからさまな税逃れです。2024年の改正後も、こうしたケースは否認されえます。
| 持ち方 | 否認のリスク |
|---|---|
| 長く住む・長く保有する | 低い(○) |
| 実態のある賃貸経営 | 低い(○) |
| 直前購入+多額の借入 | 高い(×) |
| 相続後すぐに売却 | 高い(×) |
相続税のルールには「総則6項」という例外があります。ふつうは決められた計算で評価しますが、それでは著しく不公平になる場合、国は鑑定などの別の値段で課税できます。伝家の宝刀とも呼ばれる規定です。2024年の改正でこの規定がなくなったわけではありません。
最高裁が否認を認めた2022年の判決
実際に否認された有名な例があります。ある人が亡くなる数年前に、多額の借入をして賃貸マンションを2棟購入しました。通達どおりの評価額は約3億3千万円で、借入と相殺して相続税はほぼ0円と申告しました。国税庁はこれを認めず、鑑定評価の約12億7千万円で課税し直しました。2022年、最高裁は国税庁の判断を正しいと認め、納税者が敗れました。
決め手は、評価額が低いことそのものではありません。亡くなる直前に、税金を減らす目的だけで、借金までして買った事情が重く見られました。ふつうに住む、長く貸すといった実態のある持ち方まで、同じように否認されるわけではありません。「税逃れのためだけ」と見える極端な動きが危ない、と覚えてください。
これから買う人・すでに持つ人の選択肢
ひとことで言うと──改正後は「評価額の低さ」だけを狙う対策は効きにくくなりました。これから買う人も、すでに持つ人も、実態と納税資金をセットで考えるのが基本です。
- これから買う人:評価額の圧縮は残りますが、以前ほどではありません。住む・貸すといった実際の目的があるかを先に考えます。値下がりや空室のリスクも見込みます。
- すでに持つ人:あわてて売る必要はありません。長く保有していれば否認のリスクは低く、小規模宅地等の特例が使えることもあります。まず改正後の評価額を確かめます。
- 借入がある人:直前の多額の借入は否認の材料になりえます。借入の目的や時期を、記録とともに整理しておきます。
- 迷う人:評価額の試算と否認リスクの見極めは、個別事情で結論が変わります。早めに専門家に相談するのが安全です。
評価額の目安が出たら、次は相続税そのものの計算です。家族構成を選ぶだけで税額の目安が出せる相続税の計算シミュレーションの記事で、実際の税額を確かめてください。タワマンは「買えば必ず得」ではなく、目的と資金しだいの手段です。
よくある質問
ひとことで言うと──タワマン節税でつまずきやすい6つの質問に答えます。改正後も使えるのか、対象はどれか、否認の線引き、2017年の改正との違いがまとまっています。
Q1. タワマン節税は2024年の改正でもう使えなくなったのですか?
A. 使えなくなってはいません。2024年1月から評価額に「時価の約6割」という下限が入り、3割ほどまで下げる極端な効果に歯止めがかかりました。改正後も現金(10割)より低い6割で数えるため、圧縮の効果は残ります。ただし効果は以前のおよそ半分に縮みました。
Q2. 改正の対象になるのはタワーマンションだけですか?
A. タワマンだけではありません。区分所有登記のある居住用マンション全般が対象です。影響が大きいのは時価と評価額の開きが大きい高層階・築浅の物件で、開きが小さい低層や築古はほとんど変わりません。2階建て以下の低層や、一棟所有、店舗などの事業用は対象外です。
Q3. タワマンでも小規模宅地等の特例は使えますか?
A. 使えます。マンションの土地の持ち分に適用され、自宅なら330㎡まで80%引き、賃貸なら200㎡まで50%引きです。ただし誰が相続するかなどの要件があり、使うには税額が0円でも申告が必要です。改正後の評価額に、この割引がさらに重なります。
Q4. 国税庁に否認されるのはどんなときですか?
A. 評価額が低いというだけでは否認されません。亡くなる直前に多額の借入で買い、相続後すぐ売るような、税逃れだけを狙った極端なケースが問題になります。最高裁は2022年、こうした事案で鑑定評価での課税を認めました。実態のある保有まで否認されるわけではありません。
Q5. 2017年にも改正があったと聞きました。今回とは違うものですか?
A. 別のものです。2017年の改正は固定資産税の話で、20階建て以上は上の階ほど固定資産税が少し高くなるしくみです。今回2024年の改正は相続税の評価額の話で、税金の種類も対象も違います。相続税の節税効果に直接かかわるのは2024年の改正のほうです。
Q6. 相続したタワマンを売ると、別の税金がかかりますか?
A. 売った利益には、相続税とは別に譲渡所得税がかかります。持っていた期間(亡くなった方の期間も通算)が5年を超えていれば20.315%、5年以下なら39.63%です。相続開始の翌日から3年10か月以内に売ると税金が安くなる制度もあります。
まとめ
ひとことで言うと──タワマン節税は2024年の改正で終わってはいませんが、効果はおよそ半分に縮みました。評価額は時価の約6割で下げ止まり、行きすぎた対策は今も否認されます。
3点要約
- 仕組み:売れる値段と税金の計算に使う値段の差を利用します。現金をタワマンに換えると課税の対象が小さくなります。
- 2024年の改正:評価額に「時価の約6割」の下限が入りました。改正前に時価の3割ほどまで下がっていた高層階ほど、評価額が大きく上がります。それでも現金よりは低いままです。
- これから:評価額の低さだけを狙う対策は効きにくくなりました。実態のある保有と納税資金をセットで考え、否認の線引きは専門家に確認してください。
出典・根拠:国税庁 法令解釈通達「居住用の区分所有財産の評価について」(課評2-74・課個2-23、令和5年9月28日発遣・令和6年1月1日以後の相続・贈与に適用)/国税庁タックスアンサー No.4667(居住用の区分所有財産の評価。評価乖離率=築年数×△0.033+総階数指数×0.239+所在階×0.018+敷地持分狭小度×△1.195+3.220、評価水準=1÷評価乖離率、評価水準0.6未満で「従来評価額×評価乖離率×0.6」に補正)/No.4602(土地家屋の評価)/No.4124(小規模宅地等の特例)・租税特別措置法69条の4/No.4152(相続税の計算・基礎控除)/No.4155(相続税の税率)/No.3208・No.3211(長期20.315%・短期39.63%の譲渡所得)/No.3267(取得費加算の特例)/財産評価基本通達(路線価方式・総則6項)/相続税法22条(時価評価の原則)・15条(基礎控除)/最高裁令和4年4月19日判決(令和2年(行ヒ)第283号。総則6項による鑑定評価課税を是認。通達評価額 約3億3,400万円に対し鑑定評価 約12億7,300万円で更正、納税者敗訴)/国税庁 有識者会議資料(令和5年6月。マンションの平均乖離率 約2.34倍)。改正前の評価額の水準(高層階で時価の3割前後)は物件ごとに異なり、国税庁が是正の根拠とした公式値は全国平均の乖離率2.34倍(評価額が時価の約4割)です。計算機・早見表の数値は概算で、実際の評価額は所在階・総階数・築年数・土地の持ち分で変わります。
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